表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
fate ・・・  作者: -彼方-
18/55

狩猟日記 第14話

ガチャリ、という音で目が覚めた。




まどろむ意識は、なぜか心地よかった。


同時に、視界がぼやけているのも、世界を直視せずにいられるからか、とても心地よかった。



「・・・誰」


私は、このとき久し振りに声を発した。


誰か、という質問は、あまり意味がないことは知っていた。


首だけを動かして、扉のほうを見ると、そには女性が立っていた。



何も答えず、腕を組んで私を見下ろしている。



「涼夜加奈」


不意に名前を呼ばれて、ドキリとした。



「君は、この人物に見覚えがあるか?」



そう言って見せられたのは、あの日屋上で会った男の人だった。


目の下にある傷が印象を強めていた。



「・・・ある」



そう答えた瞬間、あることが浮かんできた。



『この人、何か知っているのかも』



そんなことが頭をよぎったとほぼ同時、意識にかかった靄が晴れた。



「あなた、まさか何か知ってるの?」


睨むように、その人に言ったが、まったく怯む様子はない。


それも当然なのかもしれない。


こちらは見た目からして病弱そうな女だ。同じ女ならば尚更力の差は分かりやすいものだ。



一息おいて、女性は言った。


「知っている」


「・・・教えて」


先ほどより鋭い口調で言った。


意識してではなく、自然と出た言葉だった。



「だめだ」



女性は表情を変えずに言った。



「君に教えたところで、私になんのメリットもない。それに、君は治療が必要な身だ。そうやすやすと、秘密を明かすことは出来ない」



そこまで言い切って、女性は立ち去ろうとした。



「・・・嫌」



私は、涙腺が緩むのを感じた。



「なんで、当事者よ?何で教えてくれないの?兄がいなくなったってのに、誰も何も知らないし、気が付けば人を殺しちゃってるし。ねぇ、何で。何でなのよ!」



そこで、女性はため息をついた。



立ち止まって、こう一言だけ漏らした。



「君はハメられた。クラシキという男にな」



言い終わると、ガチャリという音が、空しく響き渡った。


次いで、自分自身の嗚咽も響いた。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ