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囁き

 それから毎日、昼休みに葵と優斗は、一緒に水やりをした。チューリップはもう少しで咲きそうだ。


「でかいヒノキだよな」


 優斗がヒノキを見上げ、ザラザラした木の肌を触りながら言った。


「ひゃっ、くすぐったい」


 ヒノキが高い声をあげるのが葵には聞こえた。


「知ってるか?今は漢字1文字だけど、ヒノキは昔、ほら、燃える火に木で、"火の木"って書かれてたらしいぜ」


「なんで?」


「よく火起こしに使われてたからだって」


「他の木も燃えるのに?」


 葵が訝しむと、優斗はちょっと機嫌を悪くした。


「…まぁ、もうろくばあちゃんが言ってたことだから本当かは分からないけどな」


 葵は慌てて鉢の集団を指差す。


「サルビアの花言葉はね、情熱なんだよ。ヒヤシンスは悲しみ」


 つらつらと鉢に植わった花の名前をあげていく。その内、葵の耳に聞いたことのない囁きが聞こえ始めた。


「そんな花言葉、嫌よ」


「僕は情熱だって!カッコよくね?」


「人間は何でも言葉で決めつける。私達をそんな一言で縛りつけないで欲しいもんだ」


 葵は思わず立ち上がる。


「誰?」


 聞いても返事はなく、そこには鉢の群れと優斗だけ。囁きはもう消えてしまった。


「どうした?」


 優斗が不思議そうに聞く。


「今、声が…ううん、何でもない」


 葵は首をかしげた。


(まさか、ね)



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