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1章 

気が付くと俺はコンクリートの床の上で横たわっていた。

「あれ、ここはどこだ?」

ゆっくりと立ち上がりながら周りを見渡す、木々の群れや古い境内、賽銭箱が見える。俺はどこか懐かしさを感じながらも神社の入り口に戻った。すると入口には神社の名前が書かれた看板があるのが見えた。

「亀窯神社・・・?どこかで聞いたことがある名前だ。」

俺は亀窯神社を後にして街を散策することから始めることにした。街を見渡してみると民家が多く並んでいて、中には小売商店をやっているところもあった。その町並みは亀窯神社と同じくどこか懐かしさを感じさせていて、ここが始めてきたところではない気がする。

「まさか・・・ここって俺の地元じゃないよな…?」

そう思った瞬間、目の前に見覚えのある少年を見つけた。格好は半袖半ズボン、年齢は12歳くらいの少年だ。

「おい、そこの坊主!」

少年は急に呼び出されて後ろを振り返る、少年はビックリしながら恐る恐る俺の顔を見た。

「えっ・・・あの、その、お兄ちゃん、僕の事呼んだの?」

「おう、そうだが坊主をどこかで見たような気がしてな、気になって声をかけたんだ。」

普通ならお巡りさんを呼ぶに違いないが、俺の推測が正しければこいつはもう警戒を解いているはずだ。

「そうなんだぁ・・・お兄ちゃん名前はなんていうの?」

俺の予想通り、少年はニコニコしながら俺に名前を聞いてきた。

「俺?俺の名前は横山良治」

とっさに思いついた名前を答える、この名前は俺が高校生の時に一番仲良くしていた友達の名前だ。

「良治兄ちゃんかぁ、僕の名前は相沢倫太郎6年生。よろしくね。」

その名前を聞いた瞬間、疑念は確信に変わった。こいつの名前が正しければここは10年前の地元であり、目の前にいる少年は子供の頃の俺だという事だからだ。俺はガキの頃の俺に質問をしてみた。

「今って西暦何年の何月何日なんだ?」

「えーっ?今は2004年の5月9日だよ?」

頭でも打ってしまったのだろうか、俺は冷静に考える。

「いかんなぁ、ライトノベルの読みすぎなのだろうか、それともSF映画の観過ぎなのだろうか、今の状況が夢みたいだ・・・」

「兄ちゃん、何の話をしているの?」

「ん?ああこっちの話だよ。それよりもさ、倫太郎」

「なぁに?」

「もし良かったら倫太郎のうちに一晩だけ泊まらせてくれないかな?実はお兄ちゃん旅をしててさ」

とっさに思いついた嘘を俺はガキの頃の俺に提案してみた。俺の予想が正しかったらこいつは俺に「いいよ」というに違いない。

「うん、いいよ!婆ちゃんと爺ちゃんの事だから多分OK貰えると思う」

あぁ、やっぱり俺だ。子供の発言だからか心配な部分はあるがなんとか了承を貰えそうだと思った俺はガキの頃の俺と一緒に子供時代を過ごしていた実家に足を運ぶことになる。こうして俺は、ガキの頃の俺と一緒に俺が失くしていったものを少しずつ取り戻していく事になる。



ガキの頃の俺と一緒に久々の実家に帰った俺は居間に上がりそこで生きていたころの爺ちゃん婆ちゃんに再開した。

客を連れてきてビックリしたのは当然の反応だがガキの頃の俺に話した嘘を爺ちゃん婆ちゃんに話したら意外な反応が返ってきた。

「おお、若いもんのくせにたいした根性だ。なんなら1日とは言わずに気が済むまで泊まっていきなさい」

「ええ倫太郎もまだ小さいし、アンタみたいなお兄ちゃんがいた方が倫太郎も安心できるわ」

あっさり承諾を得てしまった俺は、1日ならず2日3日以降も滞在することになった。

爺ちゃん婆ちゃんの性格は今でも覚えている。この人達は他人にはめちゃくちゃ甘い、特に困っている人に対しては特に親切をする人だった。10年後には二人はもう死んでいて、確か6年前に婆ちゃんが死に、その後後を追うように爺ちゃんが死んだのを覚えている。爺ちゃんが死ぬ間際に俺に「倫太郎、父さんを恨むな。」というのを。親父は、俺がガキの頃からどこか素っ気ない態度をしていて、俺が中学時代のあの日以降からもうほとんど言葉を交わすことが少なくなっていった。

親父が俺を育ててくれたことに対しては恩を感じているし、母さんがいなくて寂しい思いをしていた時におもちゃを買ってくれたのも覚えている。だけどいつか分からないけど親父は俺に対して素っ気ない態度をしていたし、それに対して俺はずっと我慢をしてきた。寂しかったと思っている。幼いながらに仕事ばかりで、爺ちゃん婆ちゃんに主に育ててもらったから爺ちゃん婆ちゃんっ子だったし、それはそれでよかったと思っているけど授業参観や運動会といった行事は親父にも見に来てほしかったし、正直のことを言うと爺ちゃん婆ちゃんに来てもらうのがだんだん嫌になっていたというのもあった。何で普通じゃないんだろうと思っていた。

「兄ちゃん、今から兄ちゃんが寝る部屋に案内するね~」

ガキの頃の俺は話が飽きたのか今日から寝泊りする部屋に案内すると言い出した。話の途中だったのだが俺は爺ちゃん婆ちゃん二人に「案内されにいってきます」と言い、居間を後にした。

 その部屋は前客間として使われていた和室だった。部屋の広さは3畳くらいで寝るのには困らない広さだった。案内された後に俺とガキの頃の俺は別れて俺は別れた後に婆ちゃんが来て用意してくれた着替えを着て布団に横たわってそのまま寝てしまった。

 時計を見ると21時頃、夕ご飯を食べることなくそのまま寝てしまったみたいで俺は誰かいないかと思い居間に行こうとする。するとガキの頃の俺の部屋の扉が少し空いてるのが見えた、何をしているのかと思い覗いてみると布団を引っ被って「スンスン」と泣いているガキの頃の俺の姿が見えた。俺はなんで泣いているのか解らず何か助けられることはないのかと思い、思わず扉を開けてしまった。


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