紅葉狩りの旅
三連休使って京都に行きました。これは京都のレポート小説です。
「……暑い。マジ暑い」
カオリが愚痴を漏らした。
「いい旅行日和じゃないか」
「今は十一月よ。こんな厚着してる私が馬鹿みたいじゃない」
「あなたの存在自体が地球の温度を上げる原因ですもの、仕方がありませんわ」
「あんたはいつになったらその減らず口が治るのかしら」
ヨウコの挑発にカオリが額に血管を浮かべる。
「あら、減らないから減らず口というのですよ。馬鹿には難しい話でした?」
「はいはい、その辺にしておけ」
俺はカオリを挑発し続けるヨウコを手で制しながら、カオリにまあまあと宥めた。せっかく旅行に来ているのだからそうかっかするもんじゃない。
俺たちは今日、古都京都を訪れていた。
「そうは言ってもねえ、こいつがやたら煽ってくるからいけないんでしょうが!」
「落ち着きなよ、カオリ。ほら、紅葉がきれいだよ 。これ見ればちょっとしたイライラなんて忘れるんじゃない?」
アリスがカオリの袖をひっぱり、紅葉を付けた木々に指を差した。
「うわあ、本当。まあいいわ、ここはアリスと紅葉に免じて許してあげる」
「別にあなたの許しを乞った覚えはありませんが……確かに不粋な事をしてしまいましたわ。ここは私が大人になりましょう」
二人とも妙にとげのある言い方をするが、ひとまずは落ち着いた。
確かに、色鮮やかな紅葉は心が洗われる様だった。
「これから向かう東福寺はもっとすごいらしいぞ」
俺たちが今向かっている東福寺。ここは京都でも屈指の紅葉の名所だ。もう十一月も下旬でとっくに葉が落ちてるんじゃないかと思ったが、この分では無駄な心配だった様だ。
駅から東福寺までの道は人でごった返しており、余計に暑く感じた。
「おお、これはすごいな!」
東福寺の本堂から続く通天橋から一望できる紅葉の大群は圧巻だった。視界が目一杯の紅で埋めつくされ、景色などにあまり興味のない俺ですら息を飲んだ。ただ、人が多くて満足に写真すら撮れない。
「司、私写真撮ろうか」
カメラ片手に背伸びしているとカオリが嬉しい申し出をしてくれた。
「おう、頼む」
空気はこういう時に中に浮いたり、すり抜けができたりと便利だ。
「撮れたよ」
「ありがとう。おお、どれもいい写真だな」
「まあね。すごかったわね、まさに絶景だったわ」
「ああ。……そういや、チヒロが見えないが、あいつどこ行った?」
「チヒロなら寺を出たあと一目散に団子買いに言ったわ」
「花より団子もここまでいくと酷いな」
まだ続きます。




