急用は休養、超重要
「もう……ダメだ……」
「司! 大丈夫か!?」
「ああ、チヒロ。俺はもう限界……だ」
俺は、心配したチヒロが差し出した手を取り、顔を床に落とした。
「司ぁ!」
「って、何やってんのよ、あんたら!」
チヒロの後頭部をカオリが強烈に叩いた。
「ふごおっ!」
チヒロは勢いよく前に倒れた。
「ああカオリ、すまんすまん。ちょっと悪ノリしちゃって」
「いや、あんたはマジでしょうが! ひどい隈よ。ちゃんと寝てるの」
「それが、あんまり寝てなくて」
「今からでも寝てらっしゃい。あんたが倒れると私が困るんだから!」
「困る? 何で?」
カオリは空気だから本来なら食事も必要無いし、俺の家にいる必要無いはずだ。
「別にいいでしょ! どうだって!」
なんか怒られた。理不尽だ。
まあいいが、せっかくのカオリの勧めなので、俺は寝てくる事にした。
「ふう、よく寝たー」
久々の長い睡眠だったので、心身共にリフレッシュされて清々しい。
伸びをしながらふと時計に目を遣ると、既に日付が変わっていた。
「こんなに寝てたのか。驚いたな。とりあえず顔洗うか」
俺が洗面所に向かおうとすると、ヨウコに会った。
「あら、おはようございます、司さん」
「ああ、おはよう。ヨウコは相変わらず早起きだな」
「司さんに会うためですから。あ、そういえばカオリが司さんに、たまには遊びにでも行ったらどうか、と言ってましたよ。癪ですが私も同意見です。私は家でゆっくりするので、司さんも少し休まれてはいかがです?」
「そうだな、じゃあ俺も羽休めと行くか」
俺は寝巻きから着替え、カバンに財布、鍵などの最低限の荷物を詰めて持った。余計に持っていっても邪魔になるだけだからな。行く場所が決まってないならこっちの方がいい。
「よし! 心配してくれてありがとな、ヨウコ。カオリにも礼を言っといてくれ」
俺はヨウコの頭を撫でた。普段邪険に扱っている分、ヨウコとしては想定外だったのか、ものすごく照れている。ヨウコは小声で返事をした。
「ありがとうございます。カオリにも伝えておきます」
「おう。じゃあ行ってきます!」
「行ってらっしゃいませ」
ヨウコは品良くペコリと頭を下げ、玄関で俺を見送った。




