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夏風邪はなんちゃらが引く

「けほっ、けほっ!」

「大丈夫ですか、司さん」


 俺が咳をしていると、アリスが近付いてくる。後に続いて他の空気ズもやってきた。カルガモか、お前らは。


「いや、ちょっと風を引いたみたいでな」

「そうなの。あ! でも夏風邪って、バ」「皆まで言うな」


 俺がカオリに言うと、素直に口を閉じてくれた。

 カオリの不用意な発言であらぬ誤解を受けるところだった。俺って結構勉強はできる方なんだぜ。バの付くなんとやらでは無いと信じたい。


「何にせよ今日はあまり動かない方がいいかもしれないな。私にできる事があれば遠慮せず言ってくれ」


 チヒロは任せろと言う様に胸を叩いた。やはり一人暮らしとは違って、誰かに頼れるというのは嬉しいな。


「ああ、ありがとう。けほっ!」


 俺はチヒロにお礼を言うと、その場にしゃがみこんでしまう。


「大丈夫!?」「大丈夫か!?」「大丈夫ですか!?」


 カオリ、チヒロ、アリスが異口同音に心配の声をあげた。


「ちょっとめまいがしただけだ」

「司、あんたもう寝てなさい」

「ああ、悪いな」


 俺は三人に体を支えて貰い、寝室に向かった。




「司さん、私、お粥と生姜(しょうが)湯を作りました。どうぞ食べてください。後、風邪薬もお持ちしました。食べ終わってから飲んでくださいね」


 ヨウコが寝室にやってきた。俺が体調を崩して一番騒ぐのはこいつだと思っていたが、姿を見ないと思ってたらこんなものを作っていたのか。


「美味いな。いつぞやの失敗とは大違いだ」

「愛の力です! 風邪に効く物や作り方を調べました」

「ほう、成長したな」


 正直、何一つ下準備しないでミルフィーユを作ろうとするのが頭おかしいだけだったんだが、ヨウコは褒められて嬉しそうだったので、無粋な事は言わないでおこう。


「今日くらいは静かに寝たいでしょうから、私はおいとましますね」


 ヨウコは病身の俺に気遣い、部屋を出ていった。何故普段はその気遣いができないのか。甚だ疑問だ。


 まあ、皆の気遣いはとてもありがたい。今日は人のありがたみを実感した日だったな。人というか空気だけど。たまには風邪も悪くない。

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