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チヒロの日常

 私は今、原宿とやらに来ている。


「何と珍妙な……」


 道を行き交う人々は妙ちくりんな格好をした者ばかりだ。鮮やかな緑やピンクの髪や、暑苦しそうな重ね着、はたまた動物を模した被り物等々……私には到底理解しがたい。

 かくいう私がこの魔境とも思える原宿の地に足を運んだのにも理由がある。それは言うまでもなく衣服を購入しに来たのだ。

 私は確証は持てぬものの、異性としての司に好意を抱いてるらしい。自分の事なのにはっきりとはしないのでカオリに訊ねたところ、恋愛というのはそういう物だと言う。いまいち腑に落ちんが……。まあいい。

 ともかく、女子力? とやらを鍛えるため、他の者の目を盗み、洒落た服購入に単身で赴いたのだ。


 私は適当に服屋に入る。カオリ曰く、私のセンスは当てにならないらしい。衣服は動きやすいに勝る事は無いと思うのだが……司がカオリのセンスを気に入っている以上、店員に訊ねるしかないだろう。


「店員さん、私に似合う服を見繕ってくれないか?」


 反応が無い。それどころか『お探しの物はございますかー?』などと、他の客に向かってしまった。私には来なかったというのに……。


「はっ! そういえば私は空気だから見えないんだった」


 司と当たり前の様に会話していたから感覚が麻痺していた。というか、私の存在が見えないという事は買い物も出来ないじゃないか。


「どうしたものか……」


 仕方が無い。帰ろう。


 結局、私の目的は果たされず、少し遠い外出も徒労に終わってしまった。



 ***



「どこに行ったかと思えば、そんな事してたのねー。アハハ、お腹痛い」


 カオリが腹を抱えながら笑い転げている。


「そんなに笑う事は無いだろう」

「アハハ、ごめんごめん。でも、面白いんだもの。あんたってしっかりしてそうなのに割と抜けてるわよねー」

「ムッ、心外だな。私だってやる時はやるさ」


 カオリは笑いながら謝るために誠意が見えない。そんなカオリの態度にムッとしていると、話を聞いていた司が提案をしてきた。


「ならまた皆で服を買いに行くか。多少はセンスを磨いたんだろ?」

「いいのか」

「もちろんだとも。財布に余裕もある事だしな」

「司、ありがとう!」


 今日の外出も無駄では無かったかもな。

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