新しい子ですね、了解しました(Ar)
ある日、頭上から少女が落ちてきた。
「あいたっ!」
「ああ、ごめんよ! 大丈夫かい?」
そう謝罪してきたのは、銀髪紫眼の少女だった。俺の予想が正しければ、この少女もまた空気の一人なのだろう。あと、やはり裸だ。
「いや、大丈夫だ。君は?」
俺が訊ねると、よくぞ訊いてくれたと言わんばかりにふふんと鼻を鳴らし、胸を張って答えた。
「ボクの名はアルゴン。大気含有量三位の気体さ」
「そうか」
「驚かないのかい?」
「残念ながら慣れてしまったもので。実は君以外にも空気少女がこの家を占有しているんだ」
「占有なんてそんな悪い言い方やめなさいよ」
話の途中で横槍を入れてきたのはカオリだった。
「確かに実害は無いが、家が狭っ苦しい」
「あ、じゃあボクは邪魔なのかな……」
俺の発言にアルゴンはしぼんでしまった。どうしよう、邪魔なのは事実だし、掛ける言葉が見つからない。
「司の言葉なんて気にしなくていいわよ。どうせ独り身で寂しいフリーターやってるんだから。むしろ賑やかなのも心の中では楽しいと思っているのよ」
「大きなお世話だ! それに賑やかじゃなくて騒がしいの間違いじゃないか?」
「は、はぁ……」
どうやらアルゴンは話についていけないみたいで、呆然状態である。
「それでボクはどうすれば……」
「ここに住めばいいんじゃない? どうせ行く当ても無いんでしょう?」
「おい、何を勝手に「反対ですわ!」
俺の声を遮って意義を唱えたのはヨウコだった。
「司さんが多大なる迷惑を被っているでしょう。それに何よりも私の恋のライバルが増えるではありませんか」
いや、空気ズの中で一番迷惑被っているのはお前のせいなんだけどな。主に追い掛け回されたり。
「いや、ここにいろよ」
半ば混乱状態に陥り、声さえ出せずにいたアルゴンに提案した。確かにカオリの言う通り、賑やかなのも悪くないだろう。実際は何かヨウコの態度にイラついたから、天邪鬼になってみただけだけどね。
「本当かい? じゃあ、ボクもここに置かせてもらうよ。ありがとう!」
***
「やばい、完全に忘れていた」
俺は自分の財布を見直すが、何度見ても入っているのは数枚の小銭のみ。五人分の出費がかさんで、俺の懐は冬を迎えたのだった。




