プロローグ
バイト帰りの暗い夜道は途切れかけの街灯で微かに照らされている 。深夜の人気の無い住宅街をとぼとぼと歩きながら溜め息を吐いた。
「はぁー、こんなに疲れるのに時給八百七十円とか絶対ぼられてるよ、俺」
あの若ハゲ店長、俺がバイトをやめられない事を知っていて足元見ているんだ。
俺、茨木司は現在十七歳にしてフリーターをやっている。神奈川の、中でも進学校の、高校に通っていたが、レベルについていけず中退してしまった。元々受験前の付け焼き刃で受かったんだ、無理もない。親からは穀潰しなど必要無いとか言われ、適当に彼らが見繕った家に入れられた。契約金は払ってやるから生活費は自分で稼げ、との事だそうだ。そういう訳で、今は一人暮らしをしていて、コンビニバイトを生業としている。
「本当なら学校とか彼女を作ったりとか、青春真っ盛りな年頃なんだけどなぁー」
俺は再度溜め息を吐く。彼女が出来ない、そういう意味でも進学校に行ったのは間違いだったかもしれない。あそこは男も女も、勉強ばかりしている勉強が恋人みたいな奴らばかりだった。おまけに美人が少ない。
決して俺がモテない訳では無い。小、中学校の頃は女子からも人気があった。ラブレターだって貰ったりした。あの頃は変なプライドがあって、女子からの告白は全て断っていた。今思えば何て馬鹿な事をしたのだろうか。
思い出すのは失敗の記憶ばかりだ。楽しい事も多かったけど、そんな事を思い出せる気分では無かった。
「ああ、神よ、どうして俺を見捨てたのですか」
俺はキリスト教信者でも何でもないが、あまりの救いの無さにイエスの言葉を呟いた。
その時、空に浮かぶ満月が眩しく輝き、光の柱が俺に降り注いだ。
「何なんだ一体!? 」
眩しさに目を細め、顔を手で覆う。
光はすぐに消えた。体を見回しても特段変わった事は無い。
「超常現象でも起こったか?」
人間が知らない事など多々ある。これもその一つだろう。
俺はいつの間にか自分の家の着いていて、鍵開けてドアノブを回す。当たり前の様にドアを開いき、返事も無いのに昔からの習慣でただいまと言う。誰もがやる事だし、変わるような事じゃない。けど、今日は一つだけ違う事があった。
「おお、神よ、まだ私を見捨てていないのですね」
「え、何っ!? こっち見ないでよ!」
目の前にいたのは、すっぽんっぽんの少女だった。
“鉄は熱いうちに打て”
昔の人はそういいました。
突如として舞い降りたアイデアだったので、別作品『最強を目指して』との平行進行になります。ですから、こちらの更新頻度は遅くなるかと思います。
まだプロローグですが、続きを楽しみにしていただきたく願います。