幕間
相変わらずこの世界は綺麗だ。とても綺麗に着飾っている。
すれ違う人間も皆美しい。とても美しく着飾っている。
ここにある全ての飾り物を一切合切外したならどれだけ醜いものが出てくるのだろうか。
あの電光掲示板も、あの女子高校生の厚化粧も、あの男子高校生の整髪料も、あのやかましい自動二輪の装甲も、全部外してやりたい。
全部外して鏡を突きつけてやりたい。今の自分自身が嘘っぱちであることを自覚させてやりたい。本当の自分自身がどれだけ醜いのか確認させてやりたい。
しかし、どんなに醜いものだろうと、少なくとも自分よりはマシなのだろうなと彼女は思う。
俯きながら、なるべく人目につかないように、顔を見られないようにして歩く。長い髪も大きなマスクも顔を隠す為にある。
結局自分も着飾っているではないかと彼女は自嘲する。
しかし顔を隠さずに歩けば彼女は奇異の目で見られる。圧倒的な数の暴力によってねじ伏せられてしまうだろう。最悪の場合通報されてしまうかもしれない。
別にそれでも構わないとも思うが家に連絡が行くのが厄介だ。また肉親に文句と嫌味を言われてしまう。
しかしこれらの装備も目的地に到達してしまえば必要ない。
目的地に着けば数の暴力に晒されることはない。一対一で敵と対峙出来る。
彼女はその場所で計四人に声をかけている。年齢層は老若男女バラバラだ。
四人とも彼女の顔をまともに見ることなく逃げてしまっている。
彼女は今の所全戦全勝だ。
つまらないなと思う。自分に合った怪異を演じたつもりだったが、それが失敗だったのだろうか。
この状況が続くなら顔を隠さずに町を歩いてみるのもいいかもしれないと彼女は思う。
「イイ……イイィ……」
奇妙な笑い声が漏れる。想像するだけで心が沸く。
思い立ったが吉日だ。一対一は今日を最後にしよう。通報されようと構うものか。明日からは無装備で町中を闊歩してやる。肉親の小言など知ったことではない。
そろそろいつもの場所だ。
彼女は破滅を抱え、狂気を逆立てた。




