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とりあえず警戒しつつも相手の武器の特性を見極めるしかない。
そのためにも一度接近戦を試みる。
体力に自信があるわけではないが、一度能力を使わずに出丘に接近を試みる。
全力で走り、10メートルほどの距離を詰めた椋は、普通に拳を握り出丘に殴り掛かろうとする。
「さっきの言い方はちょっと語弊があったかもね。君が能力を使おうが使わなかろうが関係なかったかもしれないよ。」
そういうと出丘が槌矛をゆっくりともちあげ椋の方に向ける。
本当にゆっくりな動作で、近づいてくる椋に向けて槌矛を振る。
よく見たら先程までの黒いウロボロスの位置が柄頭の先端から下の方に移動している。
ここで椋は不自然と思うべきだった。遠心力を使って威力を強めることができる鈍器をなぜこんなにもスローで振るのか。腕にも負担がかかり何の意味もないはずだ、と。
しかし椋がそれに気づくことはなかった。
椋はこちらにゆっくり右側から向かってくる槌矛を受け流そうとして右手で軽く触ってしてしまう。
ほんの少し触っただけだった。
しかしその威力は想像をはるかに超えるものであった。
椋を野球のボールに例えるなら、まさにホームランといったところだろうか。
一直線に吹き飛ばされ、廃ビルの屋上出入り口の扉に思い切り背中から激突してしまう。
椋の体はメシメシと悲鳴を上げ、背中と接触した鉄製の扉を大きくへこましてしまう。
「グゥ!」
と自分でもどこから出しだかわからないような声が出てしまう。
ズルッと重力に従い椋が床に倒れこむ。
激痛に襲われながらも椋は考えることをやめなかった。
こっちには《フール》もいる。二人の知識で(半分以上は《愚者》の知識だがそんなことは気にしない)何とか能力の解析を試みる。
おかしな点は今のとこは3箇所だ。
1.鈍器なのに切り傷が付いたこと。これはもしかしたら2撃目を食らっていたのかもしれないが、たぶんないだろう。
2.最初のフルスイングでは大した威力はなかったのに、先程のゆっくりなスイングでは、かんがえられないほどの威力で吹っ飛ばされたこと。
3.柄頭のウロボロスが移動していること。
(『理解不能の蛇槌』とはよく言ったもんだ…。さっぱりわからないや…。)
心の中で少々苦笑いをし、切にそう思う。
追撃を避けるために必死に重たい体を起こして、出丘の槌矛を凝視する。
また先程より槌頭のウロボロスの位置が変化している。
ここで椋の体に先程と同じような異変がおきる。
鈍器で殴られ吹き飛ばされたはずなのだが、掌には少し深い切り傷ができている。
出血は大したことないが、やはり2撃目を受けた記憶も感覚もない。
《愚者》がようやく出丘の能力にある程度の目星がついたといったのはそれからさほど時間がかからなかった。




