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 mission3 戦闘

 

 作戦なんてものは存在しない。ただ全力でぶつかるだけだ。

 ミッションと言えるのかどうかも微妙だが、そんなことは気にしない。

 


 着地とほぼ同時に右手を振りぬき引きずりっぱなしだった出丘を屋上の床に投げる。

 『光輪の加護』を使わなかったとはいえ、あれだけの速度で突っ込んだのだ。

 常人なら最低限気絶はしているだろう。その拳を受け止めたその反応速度は敵ながら素晴らしいものであった。

 出丘はパーソナルデータと変わらない髪の色、髪の形、身長もさほど変わっていないように見える。変わったのはその目つきだけだ。暗く、深く、吸い込まれそうなほどの闇をその瞳に宿している。そんな感じがした。

 

 椋に投げ飛ばされた出丘は固い床にその背中をつけたまま倒れていたが、暫くした後、ゆっくりとたちあがり、自分の服の埃をパッパッと払いながら椋に言う。


 「辻井椋…君かな…?」


 彼のあまりにも冷静な態度に少々驚きを覚えたが、椋は深く被っていたフードを取り、出丘に素顔を晒す。


 「そうだ…!お前がすべての元凶だったんだろ…?出丘…。」


 ピクッと彼の眉が一度揺れるが、彼はそれ以上の反応を見せない。

 友人に接するかのような声で出丘が言う。


 「1つ聞いてもいいかな?」


 椋の許可は取ることなく、そのまま続ける。


 「僕のことをどこで知った!」


 出丘から殺気に近い何かが放たれる。全身に寒気が走った。本当に気味の悪い何かが放たれている。

 

 とその殺気のようなものがどんどんと薄れていく。


 「あぁ、そうか。《愚者》の入り知恵か。」


 と何か納得したような表情で彼が言った。

 その言葉が椋にこらえきれないほどの怒りを起こした。


 「オマエのことを教えてくれたのは《愚者》じゃない!」


 出丘の表情が少し曇る。


 「俺にオマエのことを教えてくれたのは柊真琴!お前が病院で襲撃した女の子だ!」


 本当に怒りの感情しか含まれない声で椋が叫ぶ。

 その言葉に出丘も動揺を隠し切れないといった様子だった。


 「辻井君。その言い方じゃあ僕が襲ったみたいじゃないか。」


 キョトンとした顔で出丘が言う。


 「違うっていうのか?」


 歯をギリッとかみしめ、椋は怒りを抑えた声で言う。

 「ああ、違うね。襲ったのは僕の部下だ!下僕だよ!!」


 まさに開き直りといった感じだった。出丘は、自分が悪者にされることを嫌うかのようだ。


 「ふざける…」


 と椋が叫び終わる前に出丘がこれまでにないほどの大声で叫ぶ。


 「僕は悪くない!!」


 出丘に嫌悪のような表情が浮かんでいる。

 

 その言葉に反応して椋は激怒の表情を浮かべながら、左足で大きく一歩踏み込んだ。

 

 

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