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暗がりに金色の光が瞬く。椋の全身に光の輪が4つ形成されている。
昨日の発動時には3つだったはずの光輪が今はなぜか四肢に1つずつ追加されている。
しかし感動に浸っている場合ではない。今は作戦に集中する。
この技は発動時に派手なエフェクトがかかってしまうため一度隠れたわけだが、すぐに元の場所に戻る。
椋と出丘たちの距離がだんだんと縮まる。もうすぐで出丘が自宅に到着する。
椋の心臓の鼓動がバクバクと跳ね上がる。
出丘の周りの取り巻きが離れていくその一瞬を狙わなければならない。
出丘が一度家の玄関前で立ち止まり、取り巻きの6人に何かを言うとそのままゾロゾロと解散していく。
一人一人と出丘から離れていく。
『光輪の加護』の足側の能力は目視できる範囲の座標を目的地に指定し、目的地に到達するまでは任意の障害物をすり抜けることができる能力だ。この力を使えば出丘を拉致することは簡単だろう。
しかし取り巻きの前から突然リーダーが消えたら彼らはいったいどう思うのだろうか?
椋、沙希、真琴、そしてフールは2つの可能性を考えていた。
1.取り巻き自身が自らの意思で出丘を探す可能性
2.出丘が自らの能力で操って自分のもとに取り巻きを呼ぶ可能性
もしも、可能性1が発生したならば、その取り巻きが見つけにくいであろう場所を移動先にしたらいい。
もしも、可能性2が発生したならば、椋自身が拉致時に出丘が知らない場所に連れて行けばいいだけだ。
出丘の能力の詳細が分からない限りはどちらともいえない。
3人+1匹?が考え出した、仮定はこうだった。
【出丘は自分の位置情報がなければ自らのもとに取り巻きを呼べないかもしれない】
この仮定も組み込み策を練ったのだ。
椋の1段階制限の外れた『光輪の加護』を最小限しか使用せずにいかにその場所に出丘を拉致するか。
それも考え、最低限の光輪で移動でき尚且つ見つかりにくいどころか見つからない場所を椋は一か所だけ知っていた。
まさか再び訪れるとは思っていなかったが行くしかない。
椋は待った。ギリギリまで。取り巻きが全員出丘から視線を外すタイミングを。
移動に時間はかからない。できる限り取り巻きが気づかないように。
出丘が玄関の門をくぐってはいけない。目的地が目視できなくなってしまうからだ。
本当に一瞬だった。椋が全神経を振り絞り、つかんだ一瞬のタイミングだ。
椋は右足で小さく一歩目へ進み、目視できないほどの速さで出丘のもとへ突っ込んでいった。




