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真琴は暗い思考を無理やりどこかに飛ばし、向こうの話を聞いたのだから、とこっちも昨日起こったことを話すことにする。
「昨日の夜、大規模なエネルギーの流れが観測された。しかもソルスエネルギーじゃない。天然結晶の使用に必要な物なんだけど、自然のエネルギーっていうかな。………つまり、大気中に漂ってるエネルギーが何らかの理由で、一点に集中したわけ。まるでブラックホールに吸い込まれるみたいに…ね。」
正直にいうと、椋は真琴が言ってることがいまいち理解できなかった。
「ごめん、質問があるんだけど。」
「何でも言ってみなさい。大体どんな質問が飛んでくるのかはわかるけどね。」
と、少しからかい気味な小悪魔スマイルを浮かべる。
流すわけにもいかず、軽く苦笑いをするが、話が脱線しないうちに、質問を飛ばす。
「まず……、なんでその現象が俺のせいになるんだ?」
もっともな疑問である。真琴もその質問を予想していたようで、小悪魔スマイルが不敵な笑みにかわり、真琴の口から言葉が紡がれる。
「アンタの体内に少なからず、そのエネルギーが入り込んでる。これはアンタが現場近くにいないとありえない現象ね。そんでもって、あんな大量のエネルギーを浴びた奴がまともに立っていられるはずがない。けれど現場近くの病院に原因不明で搬送されたのは椋……アンタだけ。」
むぅ…とあまりよくない頭をフル回転させて、何とか話題についていく。
(つまりは、誰かが、その大量のエネルギーを使い切らないと、俺みたいに気絶して倒れる人がもっと出てくるはずだって言いたいわけだな………。でも気絶して病院に搬送されたのは俺だけ………)
「俺がそのエネルギーを全部吸収したって言いたいのか?」
「ちょっと違う。アタシはアンタがそのブラックホールの中心だと思ってる。」
椋の頭の中にクエスチョンマークが3つほど浮かぶ。今回に限ってはさっぱりわからない。
こっちの困惑顔に気付いたのか、真琴が続けて説明してくれた。
「つまり、アンタがそのエネルギーを必要としたからそこに集まった、って言えばいいのかな?」
それでも椋の疑問はぬぐえない。
「さっきも言ったが、俺は能力が使えないんだ。それだけのエネルギーを集めようと使えなかったら意味がないんじゃないのか?」
真琴もそこに引っかかっているようだ。椋はナノマシンを埋め込んでいるはずなのに、なぜかソルスエネルギーが生成されない、ゆえに人工結晶が使えない。天然結晶は持っている、が幼いころからなぜかナチュラルスキル(天然結晶によって起こせる、唯一無二の能力。大抵の人の天然結晶のナチュラルスキルが決定するのは、3~4歳のころである。子供の幼心といえばいいのか、わがままでさえも、子供にとっては真剣な願い、望みなのだ。もっと遊びたい、もっとお菓子がほしい、もっと、もっと…とこんな風に能力の発生条件を達成するのが普通である。)
は使えない。
天然結晶の動力は能力に関係なく、その大気中をさまようエネルギーを使うらしいが椋にはそんなエネルギーなんて今でも感じられない。
「ごめんね椋…アンタにとってはデリケートな問題だし、とっても不謹慎だとはもうんだけど、アンタほんとに能力使えないの?」
確かに少し不謹慎な質問である。
「うん、使えないよ。」
椋が少し苦そうな顔をする。
「それを証明する方法は?」
「そんなもの使えるんなら、今頃あんなバカみたいなことしなかったよ」
椋が軽く流すように真琴に言う。
たったこれだけの言葉でも、椋は真実を語っているんだと真琴は納得してしまった。
人の言葉の重みをこれほどまでに感じたことはなかったからだ…。