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【アンタがこのメールを読んでるってことは、たぶんアタシは危ない目にあった後だと思う。とちっちゃったんだよね。出丘の帰宅を張ってた、あいつに顔見られちゃってね…。一応情報を伝えられなかった時のためにこのメールを残したの。】
メールはまだまだ続いていた。
真琴が椋の奇襲のための偵察だということはたぶんばれていないという事。
やるのなら今日にでも奇襲をかけないと、出丘が準備を始めてしまうかもしれないという事。
そのほかに、今回の作戦のおさらい兼微調整が示されたデータファイルなども添付されていた。
携帯の設定により、ほかの人には見えないようになっていたので沙希と優奈はまだこのメールについて知らないだろう。
ほかの二人に疑われないようにデスクトップに表示された細かな作戦指示に目をやる。
こんな時に限って椋の頭は冴えわたっていた。
いや、こんな時だからこそなのかもしれない。
椋の出丘に対する怒りは次第に冷静さに変わっていく。それがこれだけの集中力を出したのかもしれない。
表示されていく文字から画像まで一字一句間違わず頭に叩き込まれていく。
データに目をやるのに集中しすぎて、ドア上部の手術中と書かれた赤いランプが消えたことにさえも気がつかなかった。
ドアが開き中から緑の術着を来た男がマスクを外しながら歩いて来た。
沙希と優奈は涙ぐんだ目でさっと医師のもとに駆け寄る。
医師はうつむいたままで、あまり朗報がきけそうな表情ではなかった。
「手術は成功しました。が、発見が遅れてしまったため出血量がひどく、このまま意識を取り戻さないという可能性も否定はできません。」
男の口から本当に申し訳なさそうな謝罪の言葉が発せられる。
確かに真琴の異変に気がつかなかったのは病院のミスかもしれないが、あの状況で気づけという方が難しいだろう。
責める気もなく二人は、医者が廊下を歩き去るのを見ていることしかできなかった。
その中でも椋は一切集中を切らさない。只々流れる文字を頭の中に詰め込む。
これが今椋の真琴にできる最大の償いであると、そうおもったからだ。
一人イスに座り携帯の画面を見つめる椋に少し不信感を抱いたのか、沙希の顔が曇る。
しかし今は隣に優奈がいるため、作戦の話は切り出すことができない。
そんな沙希の携帯に、一通のメールが届く。
声が出そうなほどに驚いてしまう。それを必死に抑え、必死に文面に目をやる。
【アイツを応援してやって。】
それだけが彼女の携帯に表示されていた




