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「えー、なかなかのネーミングだと思ってるんだけどな~。」
などとぶつぶつ文句を言う彼女を放置するわけにもいかず、とりあえず話題を元の方向に戻す。
両手でフールの頬を弄繰り回している彼女が、これまで調べ上げたことを口にしていく。
「まず、一度あいつの自宅を偵察してきた。」
椋が思っていたよりもずっと早く調べていた。真琴は机の上に携帯を置き、その投射機から立体的な出丘の自宅周辺の地図を表示させる。
一軒家で、まだ新しく見えるその家の門の前には、出丘と書かれた標識が飾られている。
赤いワゴン車が駐車場に止まっているため、保護者も一緒に住んでいると考えてもいいだろう。
(一人暮らしの方がやりやすいんだけどな…)
真剣にそう思うが、話はそんなにうまく進んでくれないものだ。
「アタシが見ている限り、家が新しいから、セキュリティがきついかもしれない。庭に侵入することも難しいと思うわ。」
と冷静な彼女の意見に、椋がほかの意見をだし、とその繰り返しでどんどんと話が進んでいく。
とりあえず、出丘を孤立させる方法は完璧といってもいいレベルだと思う。
しかしというべきか、この作戦には欠かせない、というより、誘拐に戦力を裂きすぎると、後々の戦闘で困ってしまう。
「なぁ、フール。『光輪の加護』ってあの輪は最大で3つまでなのか?」
突然だが、そうかそうでないかでかなり話が変わってくる。
「日々の鍛錬の積み重ねだ。あれが3つなのは、オマエが一日に使えるエネルギーでは各部位に3つづつしか割り振れないからだ。回数を重ねればいずれ増えるさ。」
真琴に頬を引っ張られながらも、モゴモゴと椋の問いに答える。
「つまりは回数をこなしていけば自然と増えていくのか…」
「限度はあるがな」
と椋のつぶやきをフールが返した。
しばらく話したのち次の議題に移る。
「ところで、アンタは出丘に勝利できる確信はあるの?」
真琴の発言に、少々困った顔になってしまう。
「100%とは言えないよ、相手がどんな力使ってくるかわからないからね」
と椋は少し弱気な発言をする。それを見ていたフールが、必死に真琴から逃げ出し、椋の元へ向かい、冷静に言う。
「我としては、オマエが勝ってもらわないと困るんだがな」
テーブルの上に置かれた椋の右手の手前で椋の顔を見上げるフールのそのまなざしには、真剣な表情の裏に、少々困ったといった様子がうかがえた。




