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2062年3月30日

 

 この日は真琴のお見舞いという理由で松葉づえを突きながら、いつもの病院に行く。 

 ここ数日、何度か真琴とメールで打ち合わせをし、出丘襲撃作戦の構想を練っていた。

 一度確認のために直接話し合おうという話になり今に至るのだ。

 もちろん沙希にはこのことは伝えず、今日も病院に行くことは言っていない。


 片道30分近くかけながら、病院に到着する。

 最近は顔を覚えられてしまった様で、看護師さんの計らいですぐに通してくれるようになっていた。

 なんだか毎回にこやかな笑顔で面会パスをもらうのだが、なんだか色々と勘違いされているようだ。

 (決して俺と真琴はそんな関係ではない!)

 などと思いながらエレベーターに乗る。

 振り返りながら4と書かれたボタンを押すと、ゆっくりと扉が閉まる。

 

 その扉の隙間から見慣れた黒いセミロングが見えた気がしたが、扉が閉まったためか、そのままその思考も遮断されてしまった。

 

 あまり気にも留めないで、4階に到着したのち、松葉づえを突き真琴の病室に向かう。

 この時椋は気がつかなかった。背後から尾行してくるいかにもというような、サングラスとマスクで顔面を隠した黒髪の少女に。


 廊下をゆっくりと進み、彼女の病室の前で、右の松葉づえを使って黒いボタンを押しこみ、自動ドアをスライドさせる。

 

 一歩踏み込み病室の中をのぞくと彼女は純白のベッドですやすやと眠っていた。

 真琴から呼び出されるとき、彼女の病室に行くといつも彼女は眠っている。なんだか最近それが普通になってきているが、結構失礼なことだと思わなくもない。


 その位置のまま、右の松葉づえで地面を3回カツカツカツとたたく。

 さすがに眠っている女性の部屋に無断で入るわけにはいかないので、この位置から起こそうと試みたのだ。

 案の定彼女が一度寝返りを打ち、こちらに体を向けゆっくりと重そうな瞼を開ける。


 「ああ…アンタか…ってもうそんな時間…?」

 と眠そうに眼をこすりながらこちらを見てくる。

 日頃の言葉遣いがなかったら、もっとかわいらしい少女なのに。

 寝起きは機嫌がいいらしく、きつい言葉が飛んでこない。


 「んじゃぁはじめよっか。」

 ふぁ~、と一度可愛らしくあくびをし、ベッドからテーブルセットに移動する。

 彼女はゆっくりと黒い椅子に腰かけ、椋もそれに続く。

 

 少し、彼女の前にフールを出すのは危惧されるが、彼も話に立ち会い真琴と意見を交えようと言っていたので、フールを召喚したのち、机の真ん中にちょこんと座らせる。


 やっと少し目が覚めた様子を見せた真琴が、高らかに宣言する。

 「これより!第一回出丘去勢作戦会議を始める!」

 「変な作戦名をつけるな!」

 と心の奥にとどめておくはずの言葉がつい喉から飛び出してしまった。

  

 

 

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