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椋は自分の部屋でベッドに横たわりながら母親から送ってもらった出丘宗の様々な情報が載っているパーソナルデータを眺めていた。
ご丁寧に顔写真まで張ってあったので、顔を確認する。
中学入学当時のものなので5年くらい前の写真だろうか、多少顔が変わっていてもおかしくない。そう考えながら写真に目を移す。
証明写真だからだろうか、そこには活気に満ち溢れた黒髪短髪の少年が写っていた。本当にこれが出丘という人間の過去だと言われてもイメージできない、そんな爽やかな少年だった。
下の方には家族構成など、電話番号、そして住所とその周辺の正確な地図が乗っていた。
まさかこんなに簡単に手に入ってしまうとは思わなかった椋だが、今思えば京子にこんなことをさせてよかったのだろうか、という微妙な気持ちになってしまう。
今このデータが手に入ったからといって、すぐに奇襲をかけられるというわけではないし、何せ足を完治さなければならない。
とりあえず、データ入手の件を真琴にメールで伝える事にし、その旨をメールに綴り送信する。
返事は速攻で帰ってきた。
『今すぐそのデータアタシにもよこしなさい!』
とのことだったが、事件に関係ない彼女を巻き込みたくないという気持ちがつよく、どうしても決断ができない。
しばらくの間彼女のメールを無視する。
自分からメールを送ったにも関わらず、無責任な気はするが、いまはかけがえのない友達なのだ。
それを失いたくない。その気持ちが大きいのだ。
そうやってうじうじしていると、再び真琴からメールが飛んでくる。
『アンタが何に迷ってるかは知らないけど、アタシは自分の意思でアンタ達に協力しようとしてるの。無駄な気を使わなくていいのよ。』
やはり彼女には何度も励まされる。しかし今回はわけが違う。
本当に血が流れるかもしれないのだ。しかも彼女がついてくるといえば、確実に沙希もついてくることだろう。
それだけは確実に避けたい。
『俺は、脚が治り次第、出丘の帰宅直後を襲撃して、1対1で戦うつもりだ。それなら俺一人でも何とかできるかもしれない。本当にみんなを巻き込みたくないんだ。』
それだけをメールに乗せ、真琴に向かい送信する。
再び彼女からのメールが返ってくるのに1分と掛からなかった。
『ふざけんじゃないわよ!アタシはもうとっくに巻き込まれてんの、今更引けるわけないでしょ!』
ここまで行っても引く気がないのなら、もう知らない。
そう考えた椋は、感情に任せウィンドウのキーボードをたたく。
『ああ、分かった。その代わり一つだけ約束してくれ。絶対に沙希にだけは知られるな。あいつと戦うのも俺だけだ。それを守ってくれ。』
出丘のパーソナルデータを添付し、そのまま勢いよく送信ボタンを押す。
彼女からは、了解の返事と、後日病院に来てくれという簡素な文面だった。




