9
(つまりは戦えってことだろ?)
『戦うだけがすべてではない。適合者と和解という手もある。能力を発動させ、その周囲のエネルギーを吸収できれば良いのだからな。』
(けど、その適合者を見つけれなかったらなんの意味もないんじゃないか?)
《愚者》に問う。彼は当然というように返してきた。
『我も他の奴もそれぞれ《我ら》の事を認知できる。それでなければ出丘が我とお前の事を見つけられるわけがないだろう。』
(あぁ、そうか。)
と思わず納得してしまう。しかし肝心なことを聞いていなかった。
(それを集めたら、いったいどうなるんだ?)
『言い方が悪かったな。正確には奪われたものを取り返す、だ。』
(奪われた…?《悪魔》やら他のやつにって事か?)
『そうだ。しかしここを詳しく話すと確実に日がくれてしまう。その話はまた今度話してやろう。』
なんとまぁごちゃごちゃしてそうな関係だな…と思いつつ、話の流れはなんとなくはわかった。
(つまりは相手がその《我ら》ってのの能力を発動したときに出てくるエネルギーを『愚かな捕食者』で吸収すれば、奪われたっていうフールのエネルギーが還元されるってことか。)
『まぁ、そんなところだ。で、その最初のターゲットは出丘の正の《悪魔》だ。』
彼の口からでは言葉が軽く聞こえるが、実際はとんでもなく難しいことだ。
出丘には何人の配下がいるかわからない。100人かもしれないし、1000人かもしれない。
未知数だ。それが一同に集結したならばいったいどうなるだろう。
その人達は椋にとっては無関係な人たちなのだ。無下に傷をつけてはいけない。
そこが一番の難点だった。
(不意打ちしかないかな…。)
無難にその考えにたどり着いた。
自分自身でも少々卑怯だとは思うが、向こうにも卑怯な手を使われたのだ。文句は言えまい。
松葉づえを突きながら必死に思考を張り巡らせる。
(もっとも出丘の配下が少なくなるタイミング……帰宅直後、いや…直前だ。何人いようと無理やり引っぺがして一人どこか遠くに連れて行けば何とかなるか…。)
などと考えるも、前提条件として出丘の自宅を調べなければならない、それこそ公に調べまわらなければならない。
それを出丘が感づいてしまったら、計画もおじゃんになってしまう。
こそこそせずにその出川の自宅まで調べ上げることのできる人を椋は知っているが、彼女は一応病人。その上、この事件にはあまり関わりを持っていない。真琴の手を借りるのは少し気が引けてしまうのだ。
と気が付けばいつの間にかもう自宅の前を10メートルほど過ぎていた。
家には京子の車が止まっている。
と、それを見て、椋は再び自分が馬鹿だという事を自覚する。
簡単かつ、素早く、そして正確な情報を手にすることができる人物がもう一人いたという事に今更気が付いてしまったからだ。




