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結局、フールは椋に回収され、真琴からの魔の手を回避することに成功する。
「我に何を話せというのだ?」
椋の手の人差し指にだらしなくもたれかかるフールが気怠そうに言う。
「さっき言ってただろ?《悪魔》の特徴とかさ、何でもいい。知っていることを話してくれないか?」
同じ類のものなら何か知っていてもおかしくはない。椋はそう考えていたのだ。
「仕方ない。我の目的につながることでもあるからな。」
とフールが仕方なさそうな顔をしながら、説明を開始しようとする。
「目的って?」
とそれを遮るように、沙希がフールに尋ねる。
椋自身も知らないことなので気になってはいるのだが、向こうが、時が来たら教えると言っているのだから、今教えてもらう必要はない。むしろこれでフールの機嫌が悪くなったら面倒なので何とか沙希を誤魔化す。
「始めるぞ。《悪魔》についてだが、今回我から言えることはほとんどないと思っておけ。《我ら》は憑りつく憑代によって微妙に力を変える。我は《悪魔》に支配能力があることは知っているが、それ以外の能力は憑代が決めていくことだ。我の知るところではない。」
とフールははっきり言い切る。そして続ける。
「しかし、あの事件の動機はわかる。」
その言葉に反応し、フールを支えていた椋自身が尋ねる。
「それは…いったい?」
フールがため息を付いた後椋の人差し指から手を話し、黒のテーブルの中心へ行き、一度この場の全員の顔を見て、再び口を開いた。
「そもそもの元凶は我とオマエだ。」
椋と沙希が二人そろって驚きの表情を見せる。がそんなことは気にせずフールは続ける。
「なに、簡単な話だ。出丘という奴に宿っている《悪魔》は我が現世に戻ったのを察知したのだろう。《悪魔》は力をつける前に我とその憑代である椋、オマエを配下に加えたかった。しかし自分が直接手を下しては面倒なことになる。そこで少なからずオマエと因縁がある小林を使いあの事件を起こしたのだろう。まぁ、あくまで推測だが。」
この場にいる全員がこの推論が一番正確だろうと確信していた。
暫くの沈黙が真琴の病室をつつむが、それを払うように優奈がその雰囲気を壊した。
「もうっ!みなさんそんなうじうじしないで!今日は椋さんと沙希さんの合格祝いも兼ねてどこか食べに行きませんか?」
彼女の気遣いに答えるように椋が右足に負担をかけないようにイスから立ち上がる。
「よし!今日はこんな暗い話止めよう!って俺が言える立場でもないか……ハハッ…。」
と苦笑いしつつも、何とか場の空気が元に戻ったような気がした。
病院の食事のキャンセルをし、不味い栄養食とおさらばした椋と真琴は、外に待たせている沙希と優奈のもとに向かっていた。
真琴も椋の不器用な歩みに合わせるように、ゆっくり、ゆっくりと彼の横を歩いていた。




