14
「これで今日の試験はすべて終了とさせていただきます。みなさん、お疲れ様でした。後日資料の方を送付させていただきます。」
和田はそれだけ言い残し、三人をエレベーターに案内しようとする。
「それだけですか…?」
沙希の口から言葉が洩れる。
「なにかご不満でも?」
和田から一切の悪気のが無さそうな声が帰ってくる。
「なにか……?、ふざけないで!!」
沙希が声を荒らげ叫ぶ。
和田は少し困ったような顔をし、3人に告げる。
「少し話をしましょう。この試験、あなた達に戦っていただいたのはこの部屋に通ずる暗い階段を登っている時点でのあなた達自身です。」
『確認の間』に一瞬の静けさが訪れたが、それを打ち消すように和田が続ける。
「人間という生き物は常に進化を続けなければならないのです。現にあなた達は今、進化を遂げた。さっきまでの自分よりも強くなるという進化を。」
「私が言いたいことはそんなことじゃない!」
そんな沙希の言葉を無視するかのように和田は再び口を開く。
「進化を止めた人間に存在価値なんてありません。そもそもそんな人間は我が校に必要ありませんので。」
その言葉に沙希がついにキレてしまった。
「人の価値をそんなことできめるな!!」
沙希が叫びながら和田にむかって走り出す。沙希の耳に装着されたピアスから真紅の光がこぼれる。
「まて!沙希!」
椋が追いかけようとするが自分の右足がそれを邪魔する。
「椋は黙ってて!『激痛の……』」
しかしその次が発せられることはなかった。
沙希と和田の間を遮るように、黒いローブに身を包んだ少年が突然現れる。
そして沙希が、そのローブの少年が先程案内をしてくれていた少年だと気が付いた時には、周囲の風景は塔のてっぺんから、見慣れた病院の前になっていた。今日の朝まで椋が入院していた病院だ。
「次はお庇いできませんので、行動は慎重に。」
それだけ告げると再び少年は虚空へと消えていった。
「ふざけんなぁ!!」
辺りも気にせずに、場所もわからない浮遊城に向かい沙希が叫んだ。
そんな彼女の耳元で真紅の光が儚くも霧散していった。
第4章 浮遊城での試験 終




