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『確認の間』に一つの足音が響く。もう一人の椋の物だろう。
だんだんとこちらに近づいて来るが、逃げようにも右足がもうほとんど動かない。
足に『光輪の加護』が残っていればまだ何とかなったのかもしれない。
一歩また一歩と足音がこちらに近づいてくる。
(前にもこんなことあったな…)
と思いつつ、うつ伏せ状態の体を、仰向けになるように動かき、相手の足音の方に顔を向ける。
まだ、もう一人の自分の左手と右足には鈍く光る光輪が残されている。
やり残したことはないと思った。
我ながら全力で戦ったし、最後まで諦めることはなかった。
満身創痍になりながらも、『確認の間』の天井を見上げる。
正確には天井と言わないのかもしれない、そこに広がるのは大空だ。和田は透明の膜が張ってあると言っていたが、そんなものを感じることはない。ただ蒼く蒼く澄みきった大空だ。
決してこの戦果に満足しているわけではない。自分自身に負けるというのは遺憾ではあるが、やることは全部やった。そう心の底から思った。
(ここで負けたら不合格か…。死ぬわけじゃないとしてもせめて沙希と真琴と一緒の楽しい学園生活ってやつを送ってみたかったな…。)
ここでやっと自分が満足していない理由に気が付く。そう、負けてはいけないのだ。
今回の戦いは負けることでは一切の意味をなさない。勝たなければならなかった。
(なんで自分自身に負けるんだ?もしあれが今の自分なら、それより強くなればいいだけの話じゃないか!こんなとこで寝てても何の意味もない…こんなバカみたいな試験サッサと終わらせる。立って…立って戦うんだ!)
椋の覚悟に、『その通りだ!』と《愚者》の一言が脳内に響く。
仰向けに倒れていた椋が大空に向かい右手を突き上げる。
「辻井君、リザインという事でよろしいのでしょうか?」
そこに和田の声が飛んでくる。
それを聞いた沙希と契の肩がビクッと震える。
先程までの激しい戦闘音、そしてそのあとの和田の発言。
戦況が椋に傾いていないことは、目隠しをしていてもわかる。
しかし今は試験中。沙希はただ祈ることしかできない。
椋の勝利を。
椋が空に伸ばした両手を地面に叩き付け、ガッと岩がぶつかるような音が静かな部屋に響く。それに続くように小さく、聞き取りずらいほどの声が椋の口から洩れる。
「んなわけない……。」
間髪開けずに続けて叫ぶ。
「そんなわけねぇぇ!」
その後の光景を見ていたのは、和田ともう一人の椋だけなのだろうか?
もしも沙希がこの光景を見いていたら、こう感じるのかもしれない。
「あの時とおんなじだ。」と




