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 『お前はこれでいいのか?』

 と頭の中で《愚者》の声が響く。

 視界が暗転しあの時は空間に飛ばされる。

 《愚者》は自分の心のなかと言っていた空間だ。

 (良いわけ…ない…。)

 真剣にそう思ってはいるが、いくら考えても打開策が見当たらないのだ。


 『現状を打開できる方法が一つだけある。』

 (ほっ…本当か!?でも…どうやって?)

 彼が提案してきた物は椋を納得させるには十分なものであった。

 『『光輪の加護』のギアを上げる。』

 (なるほど……けど…それは俺の体が持たないって言ってたよね?もう大丈夫なのか?)

 と疑問を抱き《愚者》に問う。

 『正確に言えばまだだ。後もう少し足りない。今回の戦闘が終わったころがころあいだと思っていたのだが…。』

 少し困っているといったような声で《愚者》が言った。

 (今の状態でギアを上げるとどうなるんだ?)

 『体の方はもう大丈夫なはずだ。だが技のコントロールがきかないだろう。強大な力ほど反動が大きいことは前にも言ったな?』

(ああ。だからあの時は諦めたんだったかな…)

『そうだ。だが今は違う。オマエがまだ勝つことを諦めていないなら現実に抗え。その経験の延長線上にオマエの成長がある。』

 (もちろん!)

《愚者》の言葉に励まされ、再三もう一人の自分に注意を向ける。


 相手は確実に自分の後ろを取ってくる。

 それがわかっていたら、相手の攻撃を一度だけ無効にできる。


予想通り相手は椋の目の前から消え、背筋に寒気が走った。

椋は後ろを振り返る前に両手で勢いよく地面を殴り光輪を消費する。

 力を込めたその拳は椋の背後の床を大きく抉り、半球状のクレーターを二つ作り上げた。

 そこに跳躍してくる拳を構えるもう一人の自分も巻き込んで、だ。

 足場を失い大きく姿勢を崩すもう一人の椋。

重たい右足を引きずりながら急いで相手を確認する。

 しかし椋は気がついてしまう。

彼の左手の光輪が消費されていない。つまりはフェイントだ。

 

 なりふり構わず、椋は左手に残る最後の光輪を消費し、もう一人の自分に殴り掛かろうとする。

 この攻撃が外れれば、椋の負けだろう。

 ひどく痛む右足のせいで、ダッシュができず倒れこむように殴り掛かるが、すでにその先にもう一人の自分はいなかった。

 再び椋の左手が大きく地面を穿ち、虚しくも全身の光輪を使い切った。

 

 

 

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