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再びエレベーターの扉が開く。
その先には先程とは違う、室内だった。正確に言えば廊下だが。
4人はエレベーターから降り、廊下を進む。
このフロアだけは他の階より少々広いようだ。
しばらく進むと一つ大きな部屋にたどり着き、ローブの少年が言う。
「私が案内するのはここまでです。これより先は面接官の指示に従ってください。では、私はこれで失礼します。」
丁寧なあいさつに、沙希がお辞儀をしながら言う。
「ありがとうございました。」
それを聞いた残り二人も、浅く頭を下る。
ローブの下に微笑みを浮かべ、彼はその場から消え去った。
中には数十名の教師と思われる人間がいる。
職員塔というだけあって職員室なのだろう。
小柄で横に広い中年のおじさんが待ち受けていた。
「私が今回の面接官を務めさせていただきます、和田と申します。辻井椋君、七瀬沙希さん、永峰契君ですね?」
3人が同時に頷くと、和田はにっこりと笑い
「会場にご案内いたします。ついてきてください。」
とだけ言うと、和田はその大きな体を揺らしながら職員室の奥に案内される。
奥にはもう一つ先ほどよりは小さいエレベーターがあった。
それでもかなりのサイズではあるが。
4人はエレベーターに乗り込み、和田が扉の横にある一番上にあるボタンを押す。
(いったいこの塔どのくらいのたかさなんだろう?)
椋はそう思もいながら、自分の心の中に緊張に包まれているのを自覚する。
(もうすぐだ…。でも…いったいどんな試験なんだろう?)
この前、合格者の真琴に試験内容を聞き出そうとしたが、「そんくらい自分で目で確かめてきなさい」と突っぱねられてしまった。
何事もずるはいけないのである…。
先程のエレベーターと違いあまりスピードは速くなかったが、目的の階に到達するのにさして時間を必要としなかった。
「きゃっ!」
と思わず沙希が声を上げてしまう。
それにつられ、椋も少し驚いてしまう。
降りた先はこの塔で一番高いフロアであった。
なぜか壁は全面ガラス張りで、学園全体が見渡せるようになっている。
いったいどれくらいの高さなんだろうか?
下の方に数人の人影を確認できるが、どれも米粒より小さい。
そんな高さのフロアをガラス張りにするなんて、少々趣味が悪い気がしたが、別に椋にいちゃもんをつける権利はない。
「ではみなさん、こちらへ。」
和田がそう言うと、ゆっくりと湾曲した廊下を進んでいく。
外の景色に見入りそうになりながらも、しっかり和田についていく。
和田がその歩みを止め、こちらに向き直す。
「この奥の部屋が試験会場『確認の間』です。」
そういいながら、大きな両開きのドアを押す和田。
(始まるんだ…!)
と心を引き締め、『確認の間』に足を踏み入れた。




