覚醒の形4~浮遊城での試験~ 1
2062年3月25日
今日はこの長かった病院生活から解放される日でもあり、国立花車学園の入学試験の申請日でもあった。
花学は学校に申請すれば、申請日から約一週間後に試験を受けられるという形式になっている。
この日は退院と試験が重なってしまい、結構ごたごたとしていた。
沙希も同日に申請を行ったため、試験は椋と沙希、一緒に受けることとなった。
ほかにも椋達と同日に申請したものがいるのならば、その人も一緒に試験を受けることになるのだろうが、その確率は低いだろう。
ところで、この花学というところは意外にすごいところだ。
椋はナチュラルスキルを所持していない。故に、花学に送信した、パーソナルデータ(本人の意思でのみ操作できる個人情報)の能力欄には何も書いていない。もし書いたならば公文書偽造になってしまう。
と屁理屈っぽいが、その状態で送ってみると意外にも『試験日のご案内』という通知が届いたので自分でもびっくりしてしまったほどだ。
花学は一応は東京都に属しているが、実際は太平洋に浮かぶ離島である。
指定された場所で、配布されたパスを見せることで、雇われている能力者が、離島まで飛ばしてくれるという、まさに能力者校らしい仕組みである。
沙希と二人電車を乗り継ぎ、指定された場所へ向かう。
あまり活気のない港町であったが、潮風が香るり自然がいまだに多く残っている良い町であった。
指定先に到着すると、大きなローブを身に着けた、若い、同年代か少し上くらいの肩幅からして男性であろう人が立っていた。
「すいません。『二点間推移』の方でしょうか?」
と椋が尋ねると少し大柄な男が低い声で尋ねてくる。
「失礼ですが、お名前の確認だけさせていただきたいのですか。」
「僕は辻井椋、こっちが七…」
「七瀬沙希と申します。」
と沙希の名前を言う前に彼女から自己紹介を始めた。
ローブをまとった少年は、二人の名前を何かの機会に入力し、確認を取っているようだ。
「はい。ツジイリョウ様とナナセサキ様ですね。確認が取れましたので、今から向こうに転移させますが準備はよろしいですか?」
一度椋と沙希が顔を合わせ、コクリと頷きあう。
「「お願いします。」」
と二人は迷うことなく声を揃え返事をした。
「では行きますよ…。」
と彼が両手をこちらに向けたのを確認したその時には、もう彼の姿はなく、港町さえもなくなっていた。




