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部屋中が金色に染まる。京子にも理解できる。とても暖かくて優しい光。
それが一点に凝縮、光が小人を形成した。
「始めまして。我が憑代の母君よ」
なんだか気さくな雰囲気のフールが京子に話しかけた。
「なんなんですか?このちっこいのは?」
と先ほどまでうつむいていた京子が目を丸くして、椋に問いかける。
「この子はフール。俺の中に住んでいる妖怪みたいなものかな?俺に能力をくれた奴だよ」
と椋が京子にいう。
目線の下の方で、
「我のことをちっこいのだの妖怪だの……言ってくれるではないか……」
とボソボソと独り言を言っている小人がいるが気にしない。
とりあえず、自殺の事から事件のことまでを一通り話す。自殺の事は彼女に話すべきではないかと思ったが、真実を隠すのは嫌なので、包み隠さずにすべて話した。
時折彼女の頬に涙が伝っていたが、椋にもそれが後悔の涙だという事が分かった。
すべてを語り終え、京子にもう一度頼み込む。
「俺を花学に行かせてください」
机に両手を付き、頭を下げる。
「顔を上げて。今の私にあなたを止める権利なんてないわ。あなたの好きにしなさい」
いつの間にか元の固い顔に戻ってはいたが、彼女の顔はなんだかすっきりとしていた。
「ありがとう…母さん」
椋がそういうと、京子はゆっくりと立ち上がり、無言のまま出口に向かった。
「早く…退院してくださいね」
小さな声でそうつぶやくと、彼女は素早く病室を後にした。
彼女が椋の病室を訪れてから、約束の10分どころか、もう2時間もたっていた。
先ほどから呼び出されただけでほとんど何の役にも立たなかったフールは、ただただテーブルの上から街を眺めていた。
どこか遠くを。
花学への進学がこれで決定した。
初めて椋が自ら選んだ道だ。
己が選んだ道を決して後悔しないように歩く。そう椋は心に誓った。
第3章 己が選ぶ道 終




