20
○~○~○~○
「改めて、今回は協力に感謝する。もちろんお礼は用意する」
全ての椅子や机を収納し、一般生徒も返したため、ある程度閑散とした部屋で、村本は始めた。
この場にいるの15人は全て《エレメントホルダー》。そもそもホルダー同士の仲は、この学園と言う環境がなければそれほど悪くなるものではない。勿論それぞれに思惑があり、敵対する事もあるだろうが、そんな例は少ない方だろう。
会議室では各寮のホルダー毎に固まり、村本の言葉を受け止めていた。
「今は一度、寮間の争いを忘れ息を合わせてはもらえないだろうか」
村本の懇願に、少しざわめいた会場も、自然と先程発表されたチーム分け、芙堂を討つ物理特化チームと少々馬を討つ特殊特化チームに別れる。
椋のいる物理特化チームに正の《力》、永棟契の姿はない。正の《力》は根底的な部分から肉体を強化する能力に特化している。これは契の能力に関係なく存在する、常時発動タイプのものだと言う。現状、未知数な要素の多すぎる契を物理特化に加えるよりも、 特殊特化チームの弱点的要素を埋めるための補充要因というポジションにつける方が安全牌だ。故に彼は特殊特化チームにいる。
「本当に協力に感謝する……」
そういった村本が、全員にあるものを配布する。
「これが私ができる最大限の支援だ」
配られたものは青い結晶状の物体だ。一般人が見れば、確実に天然結晶と見間違えてしまいそうな造形のそれが一人に1つ行き渡る。
「私が五十年間ため続けた正の《魔術師》の能力結晶片だ」
その言葉にもっとも反応し、驚愕の声音を浮かべたのは、物理特化チーム、正の《隠者》雁金悠乃が発言する。
「重信!あんたコレは!!」
「いいんです悠乃さん」
村本は雁金さんを静止させ、続けて説明を始める。
「簡単にいえば、それは死をも無効にする私の援護系最大奥義だ」
「死んだ人間までもが……」
思わず特殊特化チームのだれかが呟いた。
「正確には生き返らせるではなく、生きていた時に戻すだがな」
冷静に告げる村本はさらに続けた。
「今この場でそれを潰しなさい。そうしたら、それが開始の合図となる。心臓の停止がきっかけとなり時間を戻す」
「つまり、もしもそういう事態に陥った場合、1度甦った人間からリタイアしていくと?」
再び特殊特化チームに属する内の誰か声をあげる。
「そう言うことだ。各チームに配属されている、援助担当が戦場からその者を避難させることになる」
「わかりました」
村本は冷静にそう返すと、質問者もそれに納得した。
「他に質問がないのであれば、これから作戦に入る。皆結晶はつぶしたか?」
その声に反応し、いつくかの破壊音が響く。
そんな音が鳴りやんだのを確認し、村本が続ける。
「無理はせず、途中で棄権しても誰も責めはしない。命を第一に考えて、討伐にあたってくれ!」
「「「「「「「はい!!」」」」」」」
会場の意志がひとつになった現れか、崩れることなく均等な返事が会場を満たした。
~休息なき襲撃~ 終




