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少年辻井椋は体内に《愚者》を宿している事以外は普通の人間だ。

普通に起床し、歯を磨き、風呂に入り、勉強で頭を使い、友達と駄弁り、ご飯を食べ、布団に入る。そしてそれを繰り返す。誰とも変わらない、普通の人間だ。

そんな辻井椋が何故《七罪結晶》などと言うものに頭を突っ込んでいるのか。本心の部分を自信が理解できていなかった。


そもそもの理由はなんだっただろうか?


そう、各寮対抗試合の時、朱雀寮生坂本乙姫が七罪結晶の所持者、玄武寮生黒崎泥雲の操る《強欲》、尾裂狐に敗れたのが始まりだ。

行動する理由となったものは、間違いなく乙姫の存在だろう。目の前で起こる惨劇を、過去に起きた七瀬沙希との一件に重ねてしまい、進む足を止めることができなかったのだ。


次の理由はなんだっただろうか?


黒崎泥雲との一戦を終えた椋が校長村本重信に伝えられた言葉は、永棟契を処分する旨のものだった。

椋が転寮までして救おうとし、結果としてそれを達成することができたのだ。


現在の理由はなんだっただろうか?


口実としては、正の《魔術師》から、《愚者》の能力の断片を回収することだ。これは嘘ではない。

しかし、《愚者》自身、これは後回しでよかったといっている。優先順位は低いと言えよう。


では、何が椋を動かしているのだろうか?


それは椋自身理解できていない。自分が何のために行動しているのか。


自分のためなのだろうか?


誰かのためなのだろうか?



答えの出ない自問自答を繰り返していた。



真っ暗な空間に1人立つ椋に誰かが囁きかける。



【貴方は強い人と戦いたいのでしょう?】



違う……



【無能力者の自分に宿った強力すぎる力。試したいのでしょう?】


違う……


【自分の実力でどれ程通用するのか試したいのでしょう?】


違う……


【自分が受けてきた仕打ちを暴力と言う形で誰かにぶつけたいのでしょう?】


そんなわけない……


【その醜く血に染まった手で何人の人を傷つけてきたのですか?】


……………………


【自分の手を見てみなさい】


立ち尽くす椋は自然と自分の両手を持ち上げていた。

これまでに戦ってきた人間の姿がつぎつぎと現れ、そして倒れていく。


小林も、出丘も、ソレイユも、入学式で戦った生徒達も、須山も、金田も、黒崎も、白鳥も、契までもが、現出しては傷付き、消えていく。


やめろ……


【ほら、御覧なさい】


嫌だ……!


【きづいているのでしょう?その手からこぼれ落ちる液体がなんのなのかを】


やめろ!!!!!




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