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高らかに叫んだわりに現象はいささか規模の小さいものであった。
部屋を覆い尽くしていた金色の光は、ベッドの横にあるテーブルの上で小さく小さく凝縮されていく。
光の密度が高くなるにつれて、光が人の形を模していく。
部屋中すべての光がそこに集まると、そこにはとても小さい物でった。
大体350mlのアルミ缶くらいのサイズまで小さくなっただろうか。
性別の区別がつかないが、たぶん男であろう小人がちょこんと座っていた。
頭には大きな王冠をつけている。
がそれに反して身に着けている服はピエロのようなカラフルというよりはエキセントリックな衣装であった。
黄色と赤のひし形が交互に並んで1つの服を形成している。
しかし、ピエロのように顔は白塗りされてはいない。
かわいらしい小人がピョコッと立ち上がると、椋の方を向いて語りかけくる。
「初めまして…か?我が憑代よ」
何となく予想はしていたが、やはり驚きを隠せない。
「君が…《愚者》…なのかい?」
「それ以外に何がある?」
脳内では常に、息濡れ声のようなウィスパーな声だったが、こっちでははっきりとした声でしゃべっている。
男?にしては少し高いくらいの声だ。
「これが君が貸してくれるって言ってた能力なのかい?」
「そうだ。お前たちの世界で言う召喚系能力だ。それと君と言うのは止めろ。フールでいい」
「あっ…ああ、わかったよフール。で、この能力を使ってどういう風に母さんを説得しろっていうんだい?」
飛んできた質問に、フールは呆れ顔で答える。
「お前はバカか?お前たちの天然結晶とやらに宿る能力は基本的に1つなのだろ?しかしお前は今二つの能力を所持している。しかもその例外中の例外だ。お前の『光輪の加護』は特殊系。普通1人の能力者が複数の系統の能力を使うことはできない。これは我らを宿したものの特権だ。これで分かったか?」
フールの言葉はきついがすごく丁寧な説明に椋は首を縦にコクコク振るしかなかった。
「お前の母親に2つの能力を見せてやれ。それだけで大丈夫だ」
彼の自信満々な発言に背中を押され、一度フールには戻ってもらい、京子が病室を訪れるのを待った。




