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 「続けてもいいかの?」


 正の《隠者》ハーミットはあまり急かす様子もなく、学生たちに尋ねる。


 「すいません…………。続けてください」


 震える拳をベッドに沈め、契は感情を押し込めるようにハーミットに言った。


 「契殿が言っていた通りなのだが、先程この学園に侵入した人間はこの二人だ」


 その発言に5人全員が驚きを見せた。窓に映された映像に表示されている二人がいる場所は街の様子から見て明らかに【白虎コロシアム】跡だろう。周囲を散策する様に何かの調査をしているようだ。

 気に止める様子もなくハーミットは続ける。


 「小々馬雲仙は《傲慢》。芙堂頓馬は《憤怒》。それぞれ残る七罪結晶の所持者であった」

 「本当ですか!?」


 思わず椋が尋ねる。

 疑うわけではない。しかしあまりにも予想を上回る言葉がそこにはあり、そう言わずにはいられなかった。村本、悠乃の両名が戦闘に行っていたであろう先の時間に、残りの七罪結晶の存在は真琴の能力によって予見されていたものではあったが、研究者自身が自ら被験者となり、それを使っているのだ。さらに言えばフールが危惧していたように今回で言えば、《エレメントホルダー》が七罪結晶の所有者となってしまっている。おそらく最悪と言っていい事態だ。


 「うむ。我々でも到底足元にも及ばんかったよ」

 「そうなんですか…………」

 

 空気の重さが徐々に増していく中、老人は先ほどより大きい声で部屋の全員に告げる。


 「先程も言ったように緊急事態じゃ。奴らの目的を知ることはできなかったが何か行動を起こすまで時間の問題といえよう。そこでじゃ……………」


 続く隠者の言葉に椋は、いや、村本、悠乃を含めた全員が驚愕することとなる。


 「この学園に存在する、全ての《エレメントホルダー》を集め、掃討作戦を行う」

 

 椅子にだらしなく座っていた悠乃でさえ思わず立ち上がり、真意を確かめるようにハーミットに問う。


 「ミット。あんたそれ本気で言ってんのか??」

 

 怒りなどではなく純粋な驚き、いや、呆れ近い表情なのかもしれない。

 

 「そうですよハーミットさん。あまりこの学園の事を知らないのかもしれませんが、全員を集めるとなると障害が多すぎます…………」

 

 村本でさえも、反の意を示す。いや、そうではなく「不可能」と言いたいのかもしれない。

 そんな村本の発言に、冷静な老人はこれまでにない覇気を漂わせ叫ぶ。


 「先程お主ら二人が正の《塔》にこてんぱんにやられたのは純粋な力不足だったからだろう。おそらく椋殿と契殿を含めた四人で個を狙おうと一蹴されるじゃろう」

 「それは…………」「そうですが…………」


 ハーミットに食いかかった悠乃と村本は反抗材料を失ったかのように黙り込む。

 そんな二人の様子を見てか、ハーミットはさらに続ける。


 「とりあえず重信、この学園に存在する全ての《エレメントホルダー》に連絡を」

 「…………………はい」


 渋々といった様子か、あまり気が乗らないというのが本心だろうか、いつもの態度が虚栄かのようにおとなしくなった村本は自分の蒼龍寮のものと色が近いOLオブザーバーライセンスを起動させ作業にとりかかった。


 「ミット。確かに正攻法で攻めるべきかも知んねぇが、この学園にいるホルダーは全員学生だ」

 「そのくらいわかっておる」

 

 少し怒りを抑えているのか、雁金さんが強く握った拳がさらに力んだ。

 

 「お主の気持ちもわからんではない。だがな、もし奴らを放置して力ない学生が被害を被る事となってしまった場合、最悪死者が出てもおかしくはないんじゃよ」

 「わかってる……。わかってるけど……」

 

 取り残された5人は状況を見やることしかできない。真琴は何かを考えるように下を向き、契は怒りに拳を震わせ、懋はどうしたらいいのかわからないといった様子でオロオロと、沙希はいつもどおりの普通な表情を浮かべている。椋事態自分がどんな顔をしているかなどわからないが、正直内心では全員が同じ心境だろう。

 不安なのだ。対象は違えど、それぞれ一様に思うところがあるのだ。


 「たった今学園内の全ての《エレメントホルダー》と連絡が取れました」


 椋の思考を打ち破るように村本の声が室内に響き渡る。村本がそんなこと知る由もないわけで、彼はそのまま続けた。

 

 「生徒諸君は知っての通り、この学園は各寮の生徒間の中が悪くなるようなシステムが構築されている。そんな中全員をこの場に集めては正直何が起こるか分からない」

 「その通りだな」


 村本の言葉に割ってはいるように、今まで口を開くことのなかった椋の頭上の小人が意見を出す。


 「村本よ、御前も知っての通り、我はそもそも他の《エレメント》を敵としている存在。そんな場に全員がのこのこと現れるとも思えん」

 「敵というのはなんとも言えんが、一触即発の状態に陥ると言えるだろう」

 

 フールの言葉に概ね同意の意を示しているのか、村本は一度かんがえこむような様子を見せると顔をあげ、呟く。

 

 「では、こうしませんか?」


 そう提案をした村本は状況が状況なのであまり感情を表に出さないが、少しワクワクしているようにも見えた。

 

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