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(新しい…力?でも何のために…?)
《愚者》に問う。
『お前は母親を説得する必要があるのだろ?一つ手を貸してやると言っているんだ』
やけに協力的でなんだか裏がありそうな気がする。いや、あるのだろう。
(俺に協力して君に何のメリットがあるんだい?無償の協力ってわけじゃないんだろ?)
『もちろんだ。我には目的がある。それを成し遂げるためには、オマエがその学園に行くのが一番効率がいい。だから協力を申し出たのだ』
《愚者》がわざと目的とやらを隠した気がしたので、今一度問う。
(その目的っていうのはなんなんだ?)
しかし、愚者からその問いの答えは返ってこなかった。
『今はまだ話すことはできない。今のお前には到底できないことだからな』
(君の目的を俺が手伝わなきゃいけないのか?)
今の《愚者》の言い方だとそういうことになる。
『ああ。しかしこれは強制ではない。お前がどうしても嫌だというのならば、我は強要はしない』
(なるほど…。わかった。今回は君の力を借りよう。協力するかどうかは内容を聞いてから決めるよ)
『承知した。では…いくぞ!』
沈みかけていた意識が、再び浮き上がってくる。
パチッと瞼を開くと、椋の病室全体を埋め尽くすように、金色の光が椋の首元から放たれている。
再び脳内に《愚者》の声が響く。
『さぁ、叫べ|《移り気な旅人》《カプリシャス・フール》と』
あの事件の時、『光輪の加護』を使おうとした時は、頭の中にすでに『光輪の加護』という言葉がインプットされていたような気がするが、今回は初めて聞いた言葉だ。
だがまぁ、今から戦闘になるわけではあるまい。
こういう時こそ気分を上げていこうと思い、高らかに叫ぶ。
「『移り気な旅人』!!」
恥ずかしいくらいの大声が、病室のみならず、フロア中に響いた。




