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「とりあえず、これで5つの結晶の封印が終わったわけだ」
軽い口ぶりで懋が言う。
七罪結晶というだけあって、合計7つ。詰まるところ残り2つの結晶を封印することができれば、この一件は全て終了することになる。
残りの結晶はコードネーム《傲慢》、そして《憤怒》の二つ。この二つだけは未だに学園内で一度も反応を示したことがない。もしかしたら学園内に存在しないのではないかと考えているのだが、契の言うところの芙堂頓馬や、小々馬雲仙の考えからしてそれはないだろうと勝手な推測を立てている。
そんなちょっとした考え事に頭を裂こうとしていた矢先、それを遮るように声が耳に届く。
「本当に迷惑をかけたね…………」
少し沈みこんだ契が今日何度言ったかわからないその言葉を、また口にする。
「僕も僕なりに落とし前をつけなきゃいけない事くらいは理解しているんだ…………」
「契…………」
意味深なその言葉に含まれる契の思いを椋はある程度理解できているつもりでいた。
彼がこの一件で学園に与えた被害は甚大なものだ。
設備の修繕費どうこうの話ではない。それに割かれた時間、数多の生徒に植え付けた恐怖、ほかにも数えきれないほどのことを契は行ってきたのだ。それが許されるほどこの学園も寛大ではないだろう。
「あんた達ねェ…………」
と、再び椋の思考を遮るように大きな声が室内に広がる。
「いつまでうじうじしてんのよ!!!やちゃったもんはしょうがないんだから、とりあえずこの一連の事件が解決するまでは契、アンタも責任もって行動すること!!!わかった?」
「はいっ!!!」
と突然の真琴の叱責に契が背筋を伸ばし、たどたどしくそう答える。
話をした時点で皆ある程度理解しているのだ。契がこの学園を去らなければならなくなる可能性があることを。
それをふまえたうえで真琴は言うのだ。
「そうだよ……今できることをしよう……」
まだ少し受け入れがたいような表情で沙希は真琴に続く。
「そうだぜ契っち、まずは行動だ!」
さらに懋も続く。
契は何度も首肯し、何度もあの言葉を口にした。




