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2062年3月19日

 

 『だめです』


 電話の相手にきっぱりと断られる。

 新しい高校に行きにくいから別の学校に行きたいという旨を伝えたところだ。

 しかしここで引き下がるわけにはいかない。 


 「母さん、一度病院に来てくれないか?見せたいものがあるんだ」

 『私にそんな暇は……』

 「頼むよ母さん。10分でいい」


 椋には10分あれば彼女を納得させられる自信があった。


 『わかりました。10分だけですよ?では今すぐ向かいます』


 というだけ言ってブツリッと電話は切られてしまった。

 彼女、辻井京子は常に迷わない人だ。決断が速いというか、考えている時間がもったいらしく、常に即決がモットーである。

 彼女にとって椋はどうでもいい存在なのだ。

 天然結晶(ナチュルマテリアル)をもって生まれた椋を小さいころは可愛がってくれていたのだ。しかし何年かかっても現れない能力。決して椋のせいではないのだが、大きな期待がかかっていた分、裏切られたような気持になったらしい。

 日が経つのに比例して椋に対する愛情はどんどん消えていった。

 そんなことをわかっていても、椋にはどうすることもできなかった。

 

 しかし、今は違う。

 まだ京子には能力が覚醒したこと、そして進学先が花学という事は伝えていない。

 能力のことは電話では信じてもらえないと思ったし、せっかくなら高校もインパクトがあった方がいいと思ったためだ。

 自宅に電話をかけ京子が出たという事は、彼女は自宅にいる。

 30分ほどで病院に着くはずだ。

 時間をどうつぶそうか迷ったが、もし外に言っているときに京子が来てしまったら大変なので、病室にいなければならない。

 とりあえず携帯のアラームを20分後に設定し、純白の柔らかなベッドに深く沈み込む。

 思ったより疲れがたまってたのかすぐに眠ってしまう。

 ゆっくりとゆっくりと意識が沈んでいく中、《愚者》のウィスパーな声が脳内に響く。

 

 『聞こえるか?我が憑代よ』

 (君から話しかけてくるなんて珍しいね)


  今思えば最初に語りかけてきた時くらいだろうか。


 『そんなことはどうでもいい。オマエは今から母親にアピールすると言っていたな』

 (ああ、でもそれがどうしたんだい?)


 それこそ《愚者》にとってはどうでもいいはずだ。

 《愚者》は椋がすることに基本的に口を挟まない。椋の死にかかわる話では別だが。

 

 『今から、オマエに新しい力1つを貸してやろう』

 

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