表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
37/414

13

 「えっと…ね。アタシの家の問題なんだけどね…」

 「ちょっと、おねぇちゃん!?」


 驚くというよりは意外というように優奈が口をはさむ。


 「いいのよ、優奈ちゃん。ここまで言っちゃたんだもの。向こうの二人も気になってしょうがないと思うし。ね?」

 「まぁ気になるって言ったら気になるけど…。言いたくないんだったら全然大丈夫だからさ…」


 と真琴の投げかけに椋が正直に答える。

 

 「うちの家の父は《皇帝》の正の能力者よ。それでいてどうしようもない糞野郎だったわ!」


 苦い顔をしながら彼女が言った。

 彼女の話はいつも突拍子もないが、嘘でないのだけはわかる。


 「で、どういった能力だったんだ?」

 椋が真琴に尋ねる。その質問が出た途端、真琴の横にいた優奈が震え始める。

 そんな優奈を真琴は優しく抱きしめ背中を撫でながら、椋の質問に答えた。


 「アイツの能力は『皇帝の勅命』エンペラーズ・コマンディア。どんな命令をも絶対に従わせる能力…。命令できる事柄に制限はなく、その人間が実行可能なのであれば何でもいう事を聞かせる。そして恐ろしいことに回数に制限がない」


 椋でもすぐに分かった。その能力のえげつなさが。

 そして、先ほどからの異常なまでの優奈の震えから、一つの結論を導きだす。


 「家庭内暴力…。しかも自分の手を一切汚さない。きたない…きたなすぎる…」


 真琴が一度大きく頭を縦に振り、さらに補足していく。


 「アイツは…姉妹だろうと関係なかった…。アタシたち二人に『全力で戦いあえ』って命令をしてただ笑ってた…」


 椋の拳に自然と力が入る。

 椋の家の家庭環境も人に言えるようなものではないが、これは流石に酷すぎた。


 「それで、能力に対する対処法を探ったわけか」

 「そういうこと。実際調べるまでは一切の情報が入ってこなかったけど、調べてみれば情報がわんさか出てきたわ」


 真琴が皮肉そうな笑みを浮かべる。


 「能力に気が付いた人間には、全情報を与えるようになっているみたいだね」


 先ほどから黙り込んでいた沙希がいう。


 「普通なら、というよりも現代なら見つけられない方が当たりまえだから、見つけたものに全情報を与え、絶やさないようにする。そういうことなんだろう」

 

 これが柊姉妹がこの能力について知っていた理由なのだろう。


 「今その父親はどうしてるんだ?」


 あまり聞きたくはないが、ここまで聞いたのだから結末が気になる。


 「逃げたの。母と3人で家を出た。その日アイツの『必ず家に帰ってこい』っていうコマンドが出ていなかったの。それを見計らってね」

 「ごめん。つらいこと聞いちゃったね…。話してくれてありがとう」

 「いいのよ。アタシが進んで話したんだから」


 椋の後に続けるように真琴が答えた。

 彼女は彼女ですっきりしているようだった。


 この時椋は心に一つの誓いを立てた。

 次もし柊父に会うことがあるのならば、何と言われようとも、絶対に一発殴ってやると…。 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ