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 「ツっ!!何するんですか雁……師匠!!」

 「今のはお前が悪い!!」


 そう言って再び手を伸ばす雁金さん。


 「さっきのはイージーミスですからね!!スーパーイジーですから!!」


 とりあえずこのままでいてもどうにもならないのでその手を取り立ち上がる。


 「はいはい、わかったわかった」


 そう嗜める彼女も再開に喜んでいるのか、少しながら表情が緩んでいる気がする。

 立ち上がってようやく先ほど彼女が何をしたのかを理解した。

 猛烈な勢いの突進を続ける黒豚は確かに目の前にいる。ただ一向に進まず、突進を続けている。


 「『空間幽閉』っつてな、『隠者の隠れ家』の応用だ」

 「空間幽閉…………?」

 「そう。入口と出口を少しだけずらして設定する。んだらこんなふうに一定の空間から動けなくなるんだ」

 「ほぉ~」


 脳内でなるほどとおもいつつも、ほかの二体のことを思い出し、椋は雁金さんに警告を飛ばす。


 「まだあと二体、犬と狐がいます。狐の方は近距離攻撃をメインに、身体を変形させていろんな攻撃を仕掛けてきます。犬の方のスペックはいまいちわからないですけど、高威力遠距離攻撃と、近接攻撃、どちらも使ってきます!」

 「そんだけ分かってりゃ十分だ。それにしてもこの豚スゲェ攻撃力だな……門が破られちまいそうだ」

 

 雁金さんは黒豚を見つめながらそう呟く。突進を続ける黒豚に触れた瞬間、その場から耳無豚が消えた。

 

 「とりあえずこいつ等と、そこのお山の大将をぶっ飛ばせばいいんだろ?」

 

 エンヴィの真上から突然地面に向かい耳無豚が落下してくる。

 猛烈な爆音を放ちながら崩れていく地面。土煙を突き破り上昇するエンヴィ。


 「奴は自分の周りに防御癖みたいなモノを貼ってるんで物理的攻撃が通用しないんです」

 「物理的攻撃ねぇ……。んじゃあ精神的に追い詰めるか…………」

 「また『隠者の先導』ですか?」

 「いんや、あれはダメだ。アイツ仮面をつけてやがる。あれを引っペがせたらいいんだが……」

 

 雁金さんが若干困った顔をしている。考えているのだろうか、そのあいだに突進してきた3体を簡単に『隠者の隠れ家』をつかい幽閉する。


 「その結界があっちゃ結晶も破壊できないってことだよな?」

 「そういうことですね」


 七罪結晶のことを知っているのだろうか?まぁ、500年近く生きているうえに、村本と付き合いが長いといっていたのだから知っていてもおかしくはない。と脳内で自己完結させて、戦場を見やる。

 雁金さんの登場で一気に変わった戦況。後押しする様に背中を押す風。先程まで見えなかった勝機が一瞬見えた気がした。

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