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だが、その言葉の断片だけで椋は現状を理解してしまった。いや、させられてしまった。
目の前に広がる光景は何だ?
「Ⅴさん……これって……」
「間違いありません……《強欲》と《怠惰》です……」
いつもは冷静なⅤまで、声が震えている。状況の異常さを十分に理解しているのだ。
目の前では黒狐《尾裂狐》と黒熊《鬼熊》がぶつかり合っていた。
熊の傍らには赤いラインの入った黒地の制服を来た今多堂太と思われる人間が、そして上空には謎の浮遊物体が。
「契約者……エンヴィ……なのか……?」
「私は一度学園に戻ります。辻井様は避難して待機を!救援を読んできます!!」
そう言ってⅤは自分の転移を始めすぐにその場から消えてしまった。
逃げろと言われてしまった。逃げたい。しかし目の前には蒼龍にいた時、大久保を襲った憎き敵エンヴィがいる。そして形成は確実にエンヴィのほうに傾いている。
黒崎の時と同じように球状に姿を変え、容赦なく地面をえぐり、その危険から主を守ろうと鬼熊が今多をかばい、怪我を負っていく。
反撃のしようがないほどに圧倒てきな戦力の差なのか?この理不尽な状況の中、椋がとる行動は一つだった。
自分の心音をよく聞く。焦りからか少し早くなった鼓動をしっかりと聞くと、それに合わせて胸を三度叩く。
フィールドが展開されていないこの空間で自分の身を守るための最終手段。村本から借りた蒼の刻印を発動させたのだ。
「Ⅴさんごめんなさい……」
全身が青の光に満たされていくなか、だんだんとそこに金色の光が混ざり螺旋を描く。
「『光輪の加護』」
体に戻っていく光たち。惨状を止めるべく焦る椋の気持ちとは裏腹に、光は静かに体内に吸収されていく。青の光が消えていくなか、次の変化が起こり始めていた。どこかで見たことがあるような黒紫の光が暴れるようにして体内から溢れだしたのだ。
四肢を巡る混色の光はそれぞれに4つの光輪を形成する。
「こ……これは?」
不思議な現象が起こっていた。光輪が濁っているのだ。いつもならば金色に輝く光の輪が、入試の時のもう一人の自分の使っていた光輪のように灰に濁っていたのだ。




