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同日 所 校舎棟白虎区 時 午前8時半
「おっかしいねぇ……アタイこんな変な所に出口を開いた覚えはないんだけどな……」
少女は不自然なほどに何もない場所で一人ぽつんと佇んでいた。瓦礫の一変も残さずに破壊された街。少女にはこんな場所に見覚えがなかった。包帯で包まれた顔の左半分をかきむしりながら面倒くさそうに少女は言う。
「重信のやろうこんなとこに呼びつけやがって」
ほかに誰もいない空間でひとりしゃべりだす少女。それは回りから見たら明らかに不自然な行動と言えるだろう。
「へぇ……確かに嫌な気が漂ってるね……これが七罪結晶ってやつかい?」
しかし少女の会話は成立している。本当に誰かと話しているかのように驚きをみせ、自分の意見を語り、議論しているかのように独り言を続けていく。
「とりあえずあそこに行ってみるか?」
意見を仰ぐようにひとりでしゃべる少女。
少女が見据えたのは塔。こんなに遠く離れていてもその存在感を消し去ることのできないほどに巨大な塔を目指し少女は一人歩きだした。
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同日同刻 所 職員塔校長室
「失礼します」
ドアをノックしながらそう言うと、部屋の中から村本の「入れ」という声が聞こえてくる。豪華な装飾の施されたその一室に侵入する。中には見慣れた(といっても素顔は見たことがないが)Ⅴの姿も見える。
「では島に向かうために移動を開始するが準備は大丈夫か?」
村本が確認の言葉を飛ばす。椋はそれを首肯し、Ⅴの前に移動する。Ⅴが両手を前にだし転移の準備に取り掛かっと同時に、村本の方からなにかの音が聞こえる。ホロキーボードををいじる村本の顔が曇る。
「どうしたんですか?」
Ⅴが転移の準備を勧めながらも村本に尋ねる。
「まずいことになった……」
そう言う村本の表情はこれまでにないほどに焦りが見えている。
Ⅴの能力『二点間推移』は能力の中断ができないという唯一の欠点があるため、この推移を取り消すことができない。
それをよく理解している校長が今の出来事を素早く簡潔にまとめこちらに伝えようとする。
「よく聞け!少年!試合会場に《強―――――――――
転移が始まり二人がその場から消える。
村本の言葉が最後まで椋、Ⅴに届くことはなかった。




