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2062年5月30日 所 自室 時 午前8時
[《怠惰》回収戦。5月30日、本校周辺に浮かぶ島にて午前9時より開始する。今多堂太は8時15分、辻井椋は午前8時半の時点で校長室前に集合すること。以上]
新田の作ってくれた朝ごはんでしっかりと力を付け、学園の中央、職員塔に向かう前に昨日の晩に送られてきたメッセージを確認する。
しっかしろ靴紐を結び直し、黄色いラインの入ったブレザーに腕を通し羽織ると、玄関の扉を開ける。
「気を付けて」
と新田。
「頑張ってこいよ!!」
と懋。
「負けんじゃないわよ!!」
と真琴。
「頑張ってください!!」
と金田。
「行ってきます!!」
と椋。
みんなの声援をしっかりと心に受け止め、職員塔の校長室に向かう。本当ならば後二人にそんな言葉をかけてもらいところではあったが、現状では厳しいため気にせず前に進む。
4人も遅刻寸前まで椋の出発を街、あの言葉を送ってくれたのだ。無駄にしないためにも、しっかりと、各s実に勝利をこの手に掴んでみせる。
覚悟を決め麒麟第一寮を飛び出していった。
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同日同刻 所 校舎棟某所
少年は一人準備を進めていた。本能的な面に抗えずかぶりたくもない仮面をかぶり続ける自分に嫌気が差していた。
少年はいつもと同じ場所に隠していた立方体、仮面、そして腕輪。三つの黒い結晶を自然と手にとっていた。
自分の行動を制御できず、ただ本能に従い震える手で仮面を被る。
少年を蝕み続ける黒い結晶たちはただ静かに、禍々しく、そして艶やかに黒紫の光を放ち続けていた。
『今日も始めよう』
仮面の裏から響くくもった声はまるで先ほどとは別人格のようだった。
仮面の目にあたる部分。一直線に走る視界確保のためのラインが、まるで獅子の眼光のように鋭く光る。
『我が名はエンヴィ、契約者エンヴィ。全ては本能のままに!!』
少年は操られるかのように浮遊をはじめ、そのままどこかへと消えていってしまった。




