15
『まぁ、とりあえず私がお兄様からいただいた情報はこれくらいですわ。参考になるかどうかは定かではありませんが…………』
『いや、そんなことないよ。充分役に立つ情報だよ』
『お役に立てたのなら何よりです。ではそろそろ授業が始まってしまいますので』
『うん。ありがとう』
そう言って通話を終了する。
「無敗……か……」
持ち上げたままだった弁当の蓋を机の上に起き、温めたばかりとは言えないがまだ湯気の立つ弁当に向かい、「いただきます」と一言、新田弁当をいただいた。
○~○~○~○
同日 所 自室 時 放課後
時計はすでに5時過ぎ頃を指している。まだかなり明るく日も暮れていないが、若干の肌寒さを感じるはずなのだが、ずっと布団にこもっていた椋がそんなことを気にすることはなく、ただ村本の能力の凄さに感激を覚えていた。目立た外傷があったわけでもなく、ただ内面的な痛みに襲われていた10時間前が嘘のように体が軽い。少なくとも日常生活を送ることができる程度には回復していた。
「アンタほんとにもう大丈夫なの?」
そんな疑問を部屋でお茶を啜る真琴に投げられる。
授業終了と同時に猛烈なスピードで金田と共に帰ってきた真琴。登校から昼食までに起こった出来事を大まかにまとめ説明し、議論を開始していた。
「問題ないかな……やっぱりあの人はスゴイよ……」
若干の違和感が残り、まだ完璧とは言えないものの明日には本調子に戻れることだろう。
「あの堅そうなじいさんがねぇ……」
と、村本が正の《魔術師》であり、最強のエレメントホルダーであるということくらいは知っている真琴が訝しげに言う。村本は人格者であるがそれをあまり表には出さない。理由なんて考えたこともないが、村本と親しい人以外で彼を人格者として見れる人間はおそらく一人もいないだろう。それは真琴も例外ではない。椋でさえ最近になってようやくイメージが変わってきたのだから尚更だろう。
「で、アンタどうすんのよ?」
真琴は先程までの議題、《怠惰》回収戦について掘り返す。約一時間ほど前からずっと続けているこの話も、前提として究極の二択を突破しなくてはならないのだ。
ズバリ、戦うか戦わないかだ。
「わからないよ……」
わからないのだ。自分の行動が正しいのかどうかが。少なくとも今回は戦闘の舞台が用意されるはず。《色欲》回収戦のときの様に学園内で突破ってきに起こるものとは違い、学園外の別空間で行われることはほぼ間違いないだろう。他人を巻き込むという可能性は無いだろう。




