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『どうしたんだ乙姫?』
最近バタバタしていたため、実際に会話をするのは一週間ぶりくらいだろうか?
銀の長髪の少女のことを頭に思い浮かべながら第一声を飛ばす。
『時間も考えず突然申し訳ありません……お時間は大丈夫だったでしょうか?』
『ああ、問題ないけど』
いつもながらに丁寧かつ落ち着いた口調で話す乙姫。時間的には三限と四限の業間といったところだろうか?まあ昼休みではないため、いくら業間休みが長いといっても時間は限られているだろう。緊急のことだろうか?
そんな思考を張り巡らせながら乙姫の返答を待つ。
『七罪結晶の件なんですが………』
乙姫も少なからず椋の置かれている状況を知る人間の一人だ。椋が七罪結晶に関わるきっかけになった人間であり、大まかながらその危険性も知らせ、情報提供を望んだ人間だ。
各寮対抗試合のおかげというかなんというか、他寮では一番濃いつながりを持つ人だろう。
そんな彼女が持ちかける七罪結晶の話。椋の返答を待たず乙姫は続ける。
『今さきほど校長先生から連絡をいただきまして、朱雀二年の今多堂太の情報をできるだけ詳しく伝えておいてくれとのことでしたので、早めに伝えたほうがよろしいのではと思いまして』
『ああ、そうか』
まぁ、見た目上のデータより、実際に生活を共にする寮生の方が詳しい情報をくれるのは確かだろう。
しかしまあ、
『次の授業間に合うのか?長くなりそうだったら昼休みでもいいし、なによりメールでもいいし』
『そんなことならお構いなく。一年がそんなに移動教室が無い事くらい椋さんもご存知でしょうに。それにメールは嫌ですわ!真意が伝わらない可能性がありますし、なにより質疑応答が成立しないような気がしますし』
『まぁ乙姫がそう言うなら全然構わないけど』
椋がそう言うと乙姫は、思考で会話にしているにもかかわらず、何のためかもわからない咳払いをいれた。




