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「やあ少年。久方ぶりか?」
そう語りかけてくる校長。確かにこうやってちゃんと生身で会うのは久しぶりかもしれない。体がベッドの上でなければ尚良かったのだが。
高級感あふれる様々な家具や置物の中で違和感ありまくりの普通のベッドで上体を起こした椋は村本に「お久しぶりです」と一言入れた後に尋ねる。
「一体何があったんですか?」
部屋を見渡したところで先ほど退室したⅤを除き誰ひとりとして人はいなかった。
「いやな、なんと言えばいいのか。もうわけがわからん…………。要件だけ伝えて帰ってしまったのだ」
「なんかえらく破天荒ですね……………」
「破天荒だな………」
2m近くある巨漢が困り顔で混乱寸前に陥っている。この人はこういうタイプに弱いのかと妙な勘繰りを入れながらも、とりあえず尋ねる。
「その今多君?の要件ってのはなんだったんですか?」
「それが問題なんだ…………今回彼が望んできた要件は君との試合なんだ……」
「え?」
と本日三度目の驚きをみせ、校長に真意を問う。
「昨日の白鳥旭陽との《色欲》戦。あれを見ていた生徒のうちの一人が今多堂太だ。純粋な力試しがしたいらしい。なぜエンヴィと辻井椋をすり替えたのかはわからないが、それをバラされたくなければ試合をセッティングしてくれ、という要件だったのだ」
「そうか……たしか昨日の一件はエンヴィが白鳥を襲撃したってことで収めてるんですよね……。箝口令とかしかなかったんですか……?」
「こういう案件で箝口令などしいてしまったら逆に噂が広まってしまう。エンヴィの仕業だと生徒に思わせるためにはこうするのが最残だった」
会話を進めていくうちにいつもの村本に戻っていくのがわかる。調子を取り戻してきたのか、話す声もだんだんと大きくなっていく。
「こちらとしては物事を隠密に勧めたいのは確かなんだが、正直、今多に情報をリークされようが何されようがどっちでもいいんだ。その時真実を明かせば君の無罪は証明されるからな」
「まぁそうですね」
「どうする?君は今多との戦闘を望むか?」




