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(それでも!戦闘フィールドは対戦者以外の侵入は受け付けないはずじゃ!!)
「お前……何者だ……?」
そんな言葉を投げかると同時に白鳥から訝しげな表情の疑問が飛んでくる。おそらく椋が能力にかかっていないということが向こうにはわかるらしい。
『馬鹿か!お前は『光輪の加護』で一度フィールドを破っただろう!これは物理破壊可能なものなのだ!!』
「何故傾山羊の能力が効かない!!」
フールとの会話に割り込むように叫ぶ白鳥。もちろん《愚者》の声は向こうには届いていないのだが。
「俺は特別なんでそういうセコイ能力は効かないんですよ!」
さすがに白鳥との戦闘に持ち込んだ今、煽る必要などないのだが、これは個人的な気持ちの問題だ。
「そうか……なら……」
白鳥が右腕をすっと上げ、振り下ろす。
「暴力に訴えるしかねぇよなぁ!!」
その行動と同調し、傾山羊が不規則な足音を鳴らし猛スピードでこちらに突っ込んでくる。
その途中から猛烈に光りだす漆黒の角。禍々しいそれは見ただけでこれまでの何倍もの威力を持っていることを確信できるものだった。
「つッ!!」
その攻撃をギリギリで右に飛び避ける椋。
掠ってすらいないのに裂ける白虎の制服。
単純に威力を示したそれは奥まで付けることなく、前足を器用に使い旋回、再びこちらに向かって突進を始める。
能力を使わないででも、一応は避けることのできる攻撃、しかし向こうは一応意志を持った生物だ。何事においても油断はしてはいけない。
単純におってくるのならばこういった時の定番の対処法を使うべきだろう。
椋は避けるたびに毎回微妙な調整を重ねる。
そう、避けた後に傾山羊が白鳥に突進する形に持ち込むためのだ。
「よっと!!」
常に見張りを続けている白鳥がこの攻撃を読めないわけがないことは十分に理解している。
とりあえず一度この攻撃をやめさせたいと思っての行動だ。
まっすぐ突き進んだ傾山羊。当然の如く白鳥はサッと腕を上にあげ、おそらく上昇の命令だろう。
空中を闊歩し、上昇。天馬のように舞い上がる傾山羊は闘技場の最上部で一旦静止する。
「トッテオキだ一年生!!」
白鳥が天に向けたいた手を一気にしたまで叩き落とすように下げ、叫ぶ。
「『超分岐の四角』!!」




