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 椋の行動は至って簡単なものだった。

 確かに攻撃をよけられ、すれ違うように白鳥の後ろに回った椋は、着地地点にできた光輪の足場を踏み台にし、背を向ける白鳥に向かい再び飛んだのだ。

 この技は確かに各寮対抗試合の最後に一度使ってはいるのだがあれはモニター越しでは目視できないほどに高速だった。あの試合では見えなかった人間の方が多いだろうと踏んでいたのだ。


 おおかた予想は的中し、白鳥に先制攻撃を与えることに成功する。

 この一発でKOなんてことになってくれればそれは実に喜ばしいことなのだが、現実はそんなに甘くない。


 「ッ…………………」


 少々のうめき声と共に白鳥がゆっくりと立ち上がる。


 「…………………たな……………」


 小さな小さな声で声を漏らす白鳥。しかしその光景を吹き飛ばすかのように白鳥が叫んだ。


 「ってくれたな1年生ェェェェ!!」


 怒りなどという言葉で言い表すことができない。嵐でも起こすのではないかと思える程に闘技場の空気が震え上がる。白鳥という名前に似合わないどず黒いオーラを全身から滲ませ、ゆっくりとこちらに歩み寄ってくる白鳥。

 その踏み出す一歩々々が重く重圧となって椋に、いや、会場全体、金田や真琴にまでのしかかってくる。この時点で脳内では理解していた。黒崎との格の違いを。

 狂気とは違う黒い存在しないはずの重さが闘技場を潰しにかかっているのかと思える。

 

 内面から溢れ出した黒いオーラは流れ出るように白鳥から離れ一箇所にかたまり、徐々に形を形成していく。

 

 反り立つ4本の大きな角。不自然に1本しかない前足。そして逞しい後ろの2本の足。フォルムは黒く、尾裂狐には程遠いが十分に美しい毛並み。そして朱に染まるその眼球。


 傾山羊というだけあってか頭が少し傾き、とてつもなく不気味なその風貌の山羊が蹄を鳴らし、天を穿つように叫んだ


 「メ゛ェェェェェェェェ!!」


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