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バレてもいいとは言っても正直なところ隠密にしたいのが現実だ。
蒼龍での領土戦では可能な限り戦闘を避け、不可避の場合は仕方なくアレを使い辻井椋という存在を隠していたのだが、アレはまだ調整中だ。
とまあ目立つような行動をとってはいなかったし、表向きにこの能力を使い戦闘をするのは実に久しぶりなので、白鳥も忘れてくれいれば実にありがたいのだが、現実はそんなに甘くない。
首元の透明の結晶から溢れ出す金色の光が全身を包み、四肢に行き渡ると、それぞれに4つの光輪を形成する。展開が終わるり、白鳥の方を見やると顔面は驚愕に染まっている。
この『光輪の加護』は一度学園全土に晒してしまった能力だ。言ってしまえば知らない人間なんていない。
そしてこの能力は分類するならば特殊系だ。ほかの分類と違い、能力が被るという事少ない。さらに言えば『光輪の加護』は見た目に凄く派手な能力だ。一度見た者であればまぁ忘れることなどないだろう。
「その能力は麒麟の……」
白鳥からもれるその言葉が終わる前に、椋は右足で踏み込み白鳥の眼前で拳を構えていた。
「よそ見してる暇!!あるんですか?」
叫びその構えた右拳を胴体を抉るように突き出した。
完全に不意を付いた攻撃。しかし白鳥はそれを完全に見切り、ぬるりとした、正確に言い表すことが難しいほどに気持ち悪い動きでそれを回避し、そのまま椋とすれ違うように数歩前に進む。よけられた事により椋の右拳は虚しく闘技場の地面を削る。
「よそ見なんてしてないさ麒麟の一年!一度見た能力を見切れないわけ…………………」
余裕の表情の白鳥がサッと対戦相手の方に向かい振り返り、そして言葉を止める。
眼前にはラリアットの姿勢をとった麒麟生の一年生がにやっとした表情でその腕を振り切ろうとしていたからだ。
「だから…………よそ見すんなって言ったでしょ!!」
勢いづいた強烈ラリアットを白鳥にかまし、そのまま後頭部を地面に叩きつける。
「ガッ……!」
普通の人間であれな気絶するであろうその一撃を受けた白鳥は声にならない声を上げ、その場に仰向けのまま倒れこんだ。
「こっちの能力だって進化してんですよ先輩!一度見たくらいで理解した気にならないでください!」
キメ台詞のように吐いたその言葉は白鳥の油断あってこそのモノだが、今の白鳥には実にふさわしい言葉だった。




