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やはりというべきだろうか?
黒崎と同じように|《七罪結晶》《ギルティマテリアル》という単語を口にすると、白鳥は驚くというよりも怒り、それも違う。目の前の略奪者を憎むような表情を浮かべる。
そして黒崎の時と同じようにその言葉を口に出す。
「おい、一年生…それをどこで知った!!」
その表情の一部には恐怖も幾分か含まれているように見受けられる。
「まあまあ、そう熱くならないでください。どうします?僕と賭け事してくれますか?」
再びからかうように軽い口調で言葉を吐く。実際は本気で怖い。白鳥旭陽から放たれる狂気は黒崎のものとは違う。質というべきか、重い。その一言が最もふさわしく思える。
「チッ!勝手にしろ!」
そう言ってスタスタと目の前の建造物へと向かい歩行を開始する。
白鳥自身も、自分がどれだけ不利な状況にあるのかを理解しているのだ。
もしもこの場で目の前の少年からの交渉を拒否してしまえば自分が今後どんな目にあうのかということはわかっているのだろう。故に参加の意を見せた。
「ありがとうございます」
そのいらだちを煽るような口調はやめず、そうボソッとつぶやき椋も、真琴と金田を連れ、眼前のコロシアムへと向かって歩いた。
先ほどⅤを通して校長の方に使用許可を申請しておいたため、施設は個人の認証も求めず素直にその扉を開いてくれる、
日頃からよく使われているためか、ほかの闘技場系施設に比べて年季が入っているというか使い込まれた感がよく出ている(と言っても戦闘での被害はフィールドの加護でほとんど存在しないようなものなのだが)。
「ルールは決めているのか?」
苛立った声で白鳥が言葉を投げかける。
「いいえ、これといって特別な条件はありません」
「何をしてもいいってことか?」
「もちろんです。先輩がもってる《色欲》を使っていただいても構いませんよ?」
「いったぞ、一年生?後悔するなよ?」
向かい合ったふたりは至近距離で会話とともに火花を散らす。
闘技場のスタジアム。そのど真ん中、ふたりは対面し、金田が試合開始の挨拶をただただ待っていた。




