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真琴がわざとらしく喉を鳴らし、話を元に戻す。
「この両眼鏡は感知。アタシが片眼鏡で見た事のあるエネルギー体がどこにあるのかを教えてくれるってところかしら?簡単に言えばそんなところよ」
「つまり、さっき見た色欲は探せると?」
椋が問う。そんな能力があったならはじめから言って欲しかったわけだが、彼女なりの事情があるのだろう。
「そう、探せるの。でも何にでも弱点というか欠点というか、穴があるのよね……」
「疲労が増すとかっすか?」
ようやく口の中身をなくし、まともにしゃべることができるようになった金田が椋に続いて問う。まあ、椋も多方そんなところだろうと思っている。彼女がその力を積極的に使いたがらないということは、現状においてそれが皆の足を引っ張ることになるかもしれないからだろう。
「その通りよ。はっきりはしてないけど確実に制限時間付きね。対象のエネルギー体によってバラバラだけど」
「じゃあその制限時間?以上使ったらどうなるんだ?」
「おそらく想像通りよ?能力が解除されて、スタミナもなくなって、またあの時みたいに倒れちゃうかな……」
「あの時っていつっすか?」
金田が会話を止めるように割り込んで質問してくる。二人しか知らないことを言われても金田には理解不能だろうし、知りたくもなるだろう。
「ああ、昨日のエンヴィの襲撃事件の時だよ。………て、そういやあの時もその両眼鏡使ってたのか?」
「うん、けどアレは段違いね。だいたい短くても3分は持つんだけど、エンヴィの場合30秒と持たなかった……アイツ相当やばいよ?」
「そんなに強いのか?」
「そう!!そういえば大事なこと忘れてた!!アイツこの学園の生徒じゃない可能性があるのよ!!」
そんな椋の疑問を吹き飛ばすかのように彼女が慌てた顔で衝撃の発言をする。
「どういうことだ?」
「だってアイツ天然結晶を持ってなかったし、そもそもナチュラルスキルの結晶光が一切片眼鏡に映らなかったの!」
「外部の人間ってことか?」
「可能性の一つよね、最初に誰かからOLを奪って侵入したとかね?」
天然結晶を持っていないということは、少なくとも18以上の人間か?しかし奴は辻井椋という名を知っていた上に椋の現状までもを掴んでいた。知り合いでも知りえない情報をどこから手に入れたのか?
ほかにもいろいろな疑問が一気に頭をめぐって行った。
『可視化の両眼鏡』の話題なんてすっ飛ぶほどの衝撃情報に椋の頭は半パニック状態に陥っていたのだ。




