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真琴が赤面で金田の前に正座し、とりあえず謝罪をしたのを確認し、昼食に入る。
先ほど食堂で購入した弁当を広げ、金田に案内された場所で3人で円を組みゆっくりと箸を動かしている。
金田に案内された場所。確かに周りに誰もいない。というか入れるわけがない。なにせ周りは水、ここは湖の真ん中にある小さな陸地だ。もちろん運搬役は椋。『光輪の加護』を使い3人を送り届けたのだ。
場所的に言えばここは校舎棟だ。美術家のスケッチや、科学の水質調査、釣り部の活動拠点、として活躍する唯一の湖だ。
正直金田のあの自慢げな表情から彼が自力で行けるそんな場所があるものだと信じていたのだが、案内されたのがまさかこんな孤島だとは思っていなかったのだ。
「で、こっからどうしようか」
椋はそう言いながら箸でカツを掴み、そのまま口に運ぶ。
「どうするってったてねぇ………」
真琴が言いかけた言葉を止める。言いたいことはわかっている。再び探し出さないといけないのだ。容姿はしっかりと記憶したものの、身分が一切分からない。どこにいるかもわからない。つまりは椋のOLのカメラなどで追跡することもできない。
「もふもふぁんはへんはいひはほほはいでふ」
「口の中の物なくしてからしゃべりなよ……………」
口に精一杯と行ってもいいほどに食べ物をつっこみしゃべる金田。おそらくは僕もそんな先輩見たことないですとでも言っていたのだろうと解釈し、話を勝手にすすめる。
「とりあえず手詰まりか……」
「そうでもないわよ………」
椋のあきらめの言葉に真琴が目をそらしながらぼそっと言う。
何かを隠すというか、言いたくないといった様子だ。
「どういうことだ?」
「アタシの能力で探せるって言ってるの……」
「けどこの学園内じゃ結構近づかないと無理だってこの前……」
そう言っていたはずだ。
「アタシだってこの能力とずっと付き合ってんの。椋、アンタにはわかんないかもしんないけど、現出系の能力は進化し続ける。『可視化の片眼鏡』はただの基盤よ。そこからどういうふうに進展させるかが問題なの」
「けどそれはあれだろ?力の流れが見えるから、相手の攻撃予測ができるとかそんな感じのだろ?」
現出系能力は応用が聞かせやすい。それを教えてくれたのは真琴自身だ。しかしそれは今彼女が言っていることとは少しニュアンスが違っている気がしたため、確認のために椋はそう聞いたのだ。




