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まるでどこかの探偵物のような緊迫感あふれる尾行が続く。
男はふらふらとさまよっているように見えたものの、しっかりとした目的地の様なものがあるらしく、迷うことなくその方向へと向かっていた。
カァァァァンカァァァァンカァァァァンカァァァァンと四度甲高い音で始業のチャイムが鳴る。
始まりは高音、終りは低音でとチャイムが音分けされているわけだが、このチャイムで目の前の男が確実にさぼりだという事は理解した。
スルスルとビルのように聳え立つ校舎を縫い進んでいく男、その男より10メートルほど距離を開け尾行を続ける。上手く障害物を使い隠れ、慎重に後を付ける。真琴がいるため一定以上の距離を置いても見失うことはない。そのため確実にバレないであろう距離を取っているのだ。
「どこ行くんだろ……」
真琴がボソッとつぶやく。ここいら一帯の地理はほとんど無知な二人にそれを理解することはできない。
「僕もこんなところまで来たことないんでサッパリっす……」
続いて頼みの綱でもある金田までここではさじを投げた。一年生でほとんど選択授業が存在しない金田にそれを望んでいたわけではないのだが…。
「隠れて!!」
とっさにどこかから聞こえた物音に反応して小声で叫ぶ。
雑草を踏み抜いたかのような、ザザッという不思議な音がしたため、椋が二人を右手で制する。
実際は靴底をこするとかそんなところなのだろうが、その音が確実に長髪の男から出た音でないことは明確だった。
3人は息をひそめ、しゃがみこみしばらく様子を見る。歩いて来たのは生徒だ。制服のラインを見るに玄武の生徒か?新田以上に大柄な巨体を揺らしながらその玄武生もどことなくふらふらと歩いていく。
「(なんで玄武生までこんなところに?)」
息をひそめた真琴の声に他の二人はそろって首を傾げた。もう何が起こっているのかさっぱりでお手上げ状態だ。
「(スパイかなんかっすかね?)」
「(こんな真昼間から正々堂々?)」
確かにどの寮にもスパイはいるという話だが活動時間は大抵夜が多いらしい。何せ昼間は普通の学生なのだから。
「(そんなことより一人じゃないわよ…)」
真琴の言葉に椋と金田は再びその男の方を見遣る。
先程までそこにはいなかった大柄、いやデブが二人増えている。
「(集団か……。まぁ別にここで戦う気なんてないから人数が増えようと関係ないんだけどな…)」
椋が愚痴っぽくそんな言葉を漏らした。




