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「正直に言うと、俺もこの能力の全貌?が見えてないんだよ」
少し困ったような顔をしながら真琴に能力の説明を始めた。
「というと?」
真琴が少し興味ありげに聞いてくる。
「さっき、中に何がいるのって言ってただろ?」
真琴に確認を取る。
「うん…。アタシの『可視化の片眼鏡』でアンタを見ると、心臓の部分になんというか…意思を持ったエネルギー塊みたいなのがうごめいてるというか…。そう!黄金ウナギが心臓にまとわりついてるみたいな感じ!!」
わからないこともないが実にわかりにくいたとえだ。
当の彼女は、「いや…違うな…もっとこう…」と新しいたとえを探している。
聞いている限りでわかりやすいたとえがない。こういうのが苦手な人なのかもしてない。
「続けるぞ?」
「えっ・・・・?ああごめん。でそいつがどうしたの?」
やっと我に返ったようにこちらの話に耳を傾ける。
「そいつが言ってたんだ。この能力は5分の1しか力を出してないって。ギアを上げたら、訓練を積んでない俺では体が持たないって」
「何!?アンタのそれ、ほんとに意思を持ってるの?」
驚愕の表情を浮かべる真琴にすべて正直に話す。
「最初はあっちから話しかけてきたんだ。『愚者はオマエか?』って」
愚者という単語に反応するように彼女がイスから急に立ち上がる。
わなわなとふるえる声で彼女が言う
「あの愚者がアンタに…。でも…」
真琴の様子の代わりように少し驚きつつも彼女に問う。
確かに、さっき椋が3月12日のことを説明したとき、《愚者》という言葉は出さなかった。頭の中に響いた声だし、あまりにも非科学的だからだ。
「真琴は愚者のこと知ってるのか?」
「知ってるも何も……」
彼女の言葉が詰まる。
「そうね…アンタは愚者をなんだと理解しているの?」
こっちがした質問が想像以上に難しくなって帰ってきてしまった。
「俺は…文字通り?愚か者…のことかなと…」
自信なさげな声で答えた。
「アンタねぇ……」
少し呆れた声で帰ってきてしまう真琴がそのまま続けて
「タロットは知ってる?」
「占いの?けどいまどきそんな非科学的な…」
「そんなこと言ったら天然結晶なんてオカルトの塊じゃない」
「いやぁ…まぁ・・・そうだけど…」
返す言葉が見当たらなかった。
椋が黙っていると、彼女がすたすたと歩き、病室を出ようとしていた。
「帰るの…か?」
と、なんだか俺のせいで気を悪くさせてしまったのかと、彼女の様子を窺うように聞く。
「ちがうわよ。ちょっとアタシの部屋に行って、携帯とってくるだけ。待ってなさい」
それだけ言うと彼女は椋の病室を後にした。




