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「(うっす!)」
そんな金田の言葉をしかと受け止め、三人はただ静かに《色欲》の所持者が校舎から出てくるのを待った。ここからは探偵ごっこのようなものだ。どの学年の誰が出てこようと正直関係ないわけだがどちらかというと男で良かったという部分がある。
ちょっとした作戦、所持者をひっぱり出すための秘策が椋にはあった。そのためにはすこ~し真琴に一肌脱いでもらわねばならない訳だが、それを実行するにあたって男の方がいいという意味だ。それに個人的な話ではあるが女性を傷つけるというのはあまり好ましくないということもある。
ゴォォォォォン。ゴォォォォォン。ゴォォォォォン。と大きな鐘の音が三度鳴る。
3限の終わりを告げるチャイムだ。
「さあ、来るわよ!」
真琴が他2人に気合を入れる。
「オッス!姉さん!」
「おう!」
大体ひとつの校舎に収容出来る人間の数は1000と少し、校舎の玄関から出てくるそれだけの人数の中から身長の高い男性を見つけ出さなければならない。これから20分が肝だ。
ダダダダダと徐々に大きくなっていく足音。多くの人間が校舎の廊下を歩く音がひとつの塊となって校舎外まで響いている。
「圧巻ね……」
「やばいな……」
「ヤバイっす……」
三人の声が揃ってそんな途方に暮れるような声になってしまっている。目の前の光景を見たら誰もがそう言いたくなるだろう。
まるで蛇のように人の塊が校舎の門から次々と湧き出てくるのだ。あっけにとられるとはまさにこのことである。
「ま、真琴!」
「わかってる!『可視化の片眼鏡』!!」
発生とともに真琴の周囲を包んだエメラルドグリーンの結晶光がその左目に集中する。
「さっさと見つけ出しちゃうわよ!!」
真琴の目に一気に気合が入った。
「まだ出てきてないか?」
「そうね……でも一回のフロアまでは降りてきてる。確実に来るわ!」
真琴が一時的に校舎の方に顔を向けそういった。後ろの方、男性、高身長それだけわかれば十分だろう。
「さすが姉さん!!」
その意味を捉えてか金田が叫んだ。
「ちょっと金田!うるさい!集中できない!」
「すいません……」




